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2021年09月28日15:17

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ドラゴンとガメラ、その6

 高価なお土産を抱えて来て、ドラゴンに、けっこうな値段のハンモックを買わされたというのに、ガメラは、嬉しそうに帰って行った。
「ドラゴン。お前、本当に縮尺を間違えたのか。それに、あれだ、お前、本当に大きさを変えられなくなったのか。まあ、私は、ほら、ドラゴンに会ったのがはじめてだから分からないんだけど、ドラゴンって、もっと、こう、威厳のある顔してなかったか。ああ、絵本やゲームや映画でしか見たことないんだけどな。でも、たいていは強そうで怖そうだったぞ。あれは地球人の間違いなのか」
「質問が多いなあ。まあ、いい。本質的な問題について考えようか。お前、十歳の猫は赤ちゃんだと思うか」
「いや、猫の十歳は、もう、立派な大人、いや、高齢かな」
「それはなんでだよ」
「人間の年齢に換算したら猫の十歳は五十歳以上だろうからな」
「じゃあ、百億年生きるドラゴンの一億歳はどうよ。人間にしたら一歳じゃないのか」
「その換算方法がよく分からないけど、そんなものかもな」
「だからいいんだよ。この幼さで。俺はドラゴンとしては、まだ、幼児なんだよ。だから、お前は、もっと俺のことを面倒みないといけないなんだよ。梨とか俺に剝かせちゃいけないんだよ。まあ、そりゃ、俺が剥けばお前よりも皮を薄く綺麗に剥けるけどな。そういう問題じゃないんだよ。俺は何と言っても、人間の年齢に換算したら幼児なんだからよ。そうだ。俺、最近、ロードス島戦記にはまっているんだよ。これ、本は自分で買ったからさあ。お前、これを読んで聞かせてくれよ」
 そう言って、ドラゴンは電子書籍リーダーを筆者に渡した。いつの間にかそんな物も買っていたらしい。筆者の部屋には、次第にドラゴンの私物が増えて行った。そう言えば、昔、いかれた風俗嬢が遊びに来たとき、最初は、月に一泊二泊だったのに、週に二泊になった頃にはその女の荷物が増え、半年後には、住みついていたということがあった。
「自分で読めるだろう」
「違うよ。読んで聞かせてくれるのがいいんじゃないか。地球人は子供をそうして育てるんじゃないか。なあ、読んでくれよ」
 結局、筆者は情感たっぷりにロードス島戦記を読み聞かせることになった。ところが、十ページも読まない内にドラゴンはスヤスヤと眠っていた。その寝顔は確かに愛らしく幼かった。
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