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2021年09月27日16:52

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ドラゴンとガメラ、その5

「こうして話が盛り上がると、どうしても酒が欲しくなるんだがな。ドラゴンが未成年なんてことは、まさかないだろうしな」
 いつものようにガメラは自分の甲羅を揺り籠にしはじめた。ドラゴンはその腹の上に乗って、一緒に、その揺れを楽しんでいるようだった。
「当たり前だ。こう見えて、こう見えてって、そりゃ、この大きさになっちゃったから、まあ、幼く見えてしまうだろうけど、そこいらの人間よりは、はるかに年長者だからな、俺は」
 そう言われても説得力はない。せめて、顔だけでも、もう少し威厳があればいいのだが、顔がなんとも愛らしいのだ。全体にはギャオスに似た三角の頭でここは犬や猫というよりは鳥に近いのだが、先端の鼻は大きく、その大きな鼻にしては口が意外と小さい。何よりも、いけないのは、そのまんまるの目なのだ。これが可愛らしく見せているのだ。足は太腿が妙に太く、手は短い。
「しかし、地球防衛軍の規律が俺たちに酒を飲んでの飛行を禁じているからな。そして、最近は、俺たちの管理を厳しくしようということで、行動も制限されている。まったく、厄介な話だ」
「変えさせればいいじゃないか」
 ドラゴンがあまりに軽く、そう言ったので、ガメラは少し驚いて自分の腹の上のドラゴンを見つめていた。
「そんなこと出来ないだろう」
「人間が作ったルールじゃないか。きちんと手続きを踏めば変えられないはずもない。酒を飲んでの飛行は、そりゃ、ちょっと、地球の生物の保護から考えて難しいかもしれない。お前が普通の大きさで船の上に落ちれば、船は沈没。飛行機に激突しても大惨事。それでも都市に墜落するよりは、かなり、まし、と、そうしたものだからな。そんな危険なものが飛ぶだけでも人間は嫌だろうよ。しかし、酒を飲まずに飛ぶのは自由でいいし、ましてや、人間の姿で飛行機など使って移動しているのには文句はないはずだろう」
「ああ、でも、ほら、俺たちがウイルスの原因になるとか」
 俺たちとガメラは言うが、確かにギャオスやコモドオオトカゲやウルトラマン次郎は怪しいが、お前は違うだろう、と、筆者は思った。当然、ドラゴンもそう思っているはずだ。
「菌というならともなく、ウイルス感染を心配するなら、そりゃ、非科学的だよな。生命の構造が違うんだからな」
 ドラゴン、もっと根本的なことがあるだろう、そこは無視するのか、何故だ、お土産が美味しかったからか。
「お前、俺に、もっと別の言い方があるだろうと期待しているようだけどな。コンピュータウイルスは人間に感染しないなんてこと、俺は言わないからな」
 筆者の心を読んだかのようにドラゴンが言った。
「感染するのか、コンピュータウイルス、まさかな。でも、それじゃあ、ガメラは、ちょっと、ウイルス感染という意味では、あれだろう」
 筆者は少し混乱していた。ドラゴンがガメラを本気で生物と捉えているかもしれないことが理解出来なかったのだ。
「あのな。じゃあお前に尋ねたいんだがな。お前を構成している本質って何だよ。そこにあるのは配列なんだぞ。その配列を最初に作ったものは誰なんだよ。神と考えるなら、それもいいが、その神が金属機械によって配列を作り増殖させているとしたらどうするよ」
 意味が分かり難い。ようするに、遺伝子を実験室で作ったとして、それが増殖して生物になったと考えるなら、ガメラも筆者もその本質は同じだと言うことなのだろうか。
「ガメラは優しい、お前も優しい、それでいいんじゃないか。俺はお前の心臓が二つあっても、お前の脳の半分が機械でも、お前が優しければそれでいいぞ。問題はそこじゃないんだよ。ガメラがどんなお土産を買って来てくれるか、そこなんだよ」
 そこなのか、ドラゴン、それは違うだろう。
「さすが宇宙の叡知と言われるドラゴンだ。そう言うことだよな」
 ガメラ、お前も、少し違うと思うぞ。筆者程度の頭では反論こそ出来ないけどな。
「それはそうと、ガメラよ。これをちょっと見てくれ」
「なんだ」
 ドラゴンはいつの間にかガメラの腹からモニターの前に移動していた。そのスピードは相変わらず速い。まるで瞬間移動を見ているかのようだ。そして、そのモニターに写し出されているのは、ちょうど、ドラゴン程度の大きさの動物のサイズのハンモックだった。
「お前の腹の上は最高に心地良いんだけどな。ほら、地球の事情で、お前も、そうそうここに来れるわけじゃないだろう。だから、お前がいないときに俺が、揺ら揺らを楽しむ道具なんだよ。これは優れ物なんだよ。ちょうど、そのベッドの脇が空いてるだろう。支柱があるから天井や壁をキズつけることもないんだよ」
「本当だ。それは凄いものだなあ」
「な、そうだろう。ここにお前のカード番号を記入してくれれば、あとは住所が登録してあるから、ちゃんとここに届くんだよ」
「ああ、そうか、どこだ」
 ガメラよ、それでいいのか。ギャオスといい、ガメラといい、お前たちは少しドラゴンに甘くないか。こいつは見た目と違って、お前たちより年長かもしれないし、お前たちより金持ちかもしれないんだぞ。いいのか、本当に、それでいいのか。まあ、確かにドラゴンがペット用のハンモックで寝ている姿は筆者も見たいわけなのだが。それでいいのか。
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