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2021年09月20日17:07

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ドラゴンとギャオス、その4

 筆者のパソコンにペットショップの通販が映し出されていた。最近、筆者のパソコンは、すっかりドラゴンに占領されてしまっている。従って、ペットショップのサイトを開いているのもドラゴンなのだ。
「なあ、ギャオスに相談なんだけどさあ」
 ギャオスは筆者の出したナッツを酒も飲まずに、炭酸の肴として食べていた。
「何だよ。ドラゴンが、このギャオスに相談しなけりゃならないことなんてないだろう」
「俺、こいつのベッドの隅に寝かされてるんだよ。だから、こいつが寝がえりする度に起こされるんだよ。こいつの足下で丸くなって寝かされていることもあるんだぜ。可哀想だろう。まるで猫扱いだよ」
 猫にしか見えないのだから仕方ないような気がするが、まあ、ドラゴンの言うことも、もっともなのだ。さすがに、フルーツを盛った皿を床に置くようなことはしないし、トイレなどは人間のものを使ってもらってはいるが、それでも、しばしば、猫と間違えて扱ってしまう、それは確かなのだ。
「それで、何だよ」
「だから、このベッドをお前が買ってくれよ」
 パソコンの画面に映し出されているのは、猫用のベッドだ。確かにフワフワと気持ち良さそうだが、しかし、どう見ても猫用なのだ。
「それでいいなら、私が買いますよ。そもそも、お前から預かっているお金があるわけなんだから」
「嫌だよ。今は、お前のベッドで一緒に寝ているだろう。だから、寂しくないわけだよ。でも、これを買ったら俺は一人で寝ることになるんだよ。それは寂しいだろう。その時、ああ、これはギャオスの買ってくれたベッドなんだ、と、そう思うと寂しくないわけだよ。スヤスヤ眠れると思うんだよなあ」
 ドラゴンが本気で、そんなことを言っているとは思えない。しかし、ドラゴンの宝石、宝玉を売れば地球では、けっこうなお金になるので、ケチでそんなことを言っているとも思えなかった。
「なんだ、そんなことなら、いいよ。俺、印税が入っているから、それぐらい買ってやるよ」
「あ、じゃあ、これじゃなくて、こっちのダヤンのほうでもいいかなあ。ちょっと高いんだけど、このダヤンっていうのが可愛いんだよ。そうだ。お前、そこ、ちょっと片づけておけよ」
 ドラゴンは突然、筆者の方を見て言った。
 ギャオスの母性が強いのは仕方ないが、こいつは実際に子の親になったら、その子育てには失敗するだろうな、と、筆者はそんなつまらない心配をしてしまった。ギャオスは子供の言いなりになるダメ親になりそうだと思ったからだ。
「おいおい、ここにベッドを置きたいなら自分で片付けろよ。だいたい、お前、何でも出しっぱなしにするから、いけないんだぞ」
「だって、ここはお前の家じゃないか。勝手に片付けたりしたら悪いじゃないか。遠慮してるんだよ。なあ、いいだろう。ここにベッドのスペースを作ってくれよ。ほら、ここなら、俺が起きたとき、お前が、まだ、寝ていたとしても、すぐに用を頼めるじゃないか」
 どこが遠慮しているのか分からない。少し説教でもしようかと思っていたら、ギャオスが筆者のベッドの枕の上にあるサイドテーブルの上を片付けはじめた。そして、クレジットカードをドラゴンに渡して「好きなものを買えばいいよ」と、言った。ギャオス、お前は甘やかし過ぎだ。それでは子供は、しっかりと育たないぞ、と、思ったところで、目の前にいる生物が筆者やギャオスよりも、よほど年長、いや、そんなものではないことを思い出した。ドラゴンは筆者やギャオスなど比較にならないほど長い年月を生きているのだ。
 ドラゴンは、クレジットカードを一瞬見ただけで、ささっとベッドを注文した。
「すごい、明日には届くみたいだぞ。ワープとか使うのかなあ」
 地球にはそんな技術はない。その前に、ドラゴン、ギャオスにお礼ぐらし言え、と、そう思ったのに、ギャオスはすでにドラゴンと一緒になって喜んでいた。ドラゴンがギャオスの作ってくれたスペースの寸法を計測して、ぴったりだよ、と、言うと、ギャオスは「こいつのベッドが大き過ぎるよな、こっちも少し小さいのに買い換えるなら、俺、金出してやるぞ」と、言った。
「そうだな、まあ、その時は頼むよ。でも、今はこれでいいや」
 その時って何だ。今はこれでいいってお前が決めるな、と、思ったが、何しろ、子供のように喜ぶギャオスとドラゴンを見ていたら、そんなことは言えなくなってしまった。ギャオスだけではない。筆者も、また、甘いのだ。そして、それと知っていてドラゴンは、猫を演じているのではないかと筆者は疑った。ああ、まさにドラゴンは、猫を被っているというわけか。
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