【今日の読了 拡大版】筒美京平 大ヒットメーカーの秘密/近田春夫(文春新書)

何度か書いているけど、それまでなんとなく聞き流していただけの歌謡曲、とりわけ筒美京平楽曲の素晴らしさに気づかせてくれたのは、高校時代に雑音混じりで聴いていた近田春夫DJ、TBSラジオ「電撃的東京」という深夜番組。最初はヤンタンとオールナイトニッポンの間のつなぎだったんだけど、いつのまにかハマってしまった。

それから40数年、またまた近田春夫というフィルターを通して筒美京平という稀有な存在を味わえることになったのはこの上ない幸せというもの。著者自身があとがきで語るように、本書は大げさな“筒美京平論”みたいなものではいっさいなく、ほとんどが著者の語りおろしに近い喋り文体による構成、一気読みが可能となった次第。

まずは著者自身が筒美京平の偉大な足跡を時系列に語る。必然的に歌謡曲からJ-POPへの流れを追うことになるのだけど、著者のボキャブラリーというか様々な事象にたいする表現力の巧みさに敬服。次章では筒美京平と近いところにいた渡辺忠孝(実弟)・橋本淳・平山みきの3名と対談、あまり語られなかった彼の実像が明るみになる。

筒美京平は沢田研二・山口百恵・ピンクレディー・松田聖子・中森明菜にいっさい楽曲を提供していないと知った(前二者からはオファーあるも断ったとか)。これはあの時代にある意味スゴいなあと。最終章では著者が選ぶ筒美京平の10曲、きっちりマニアックに流れたけど、はたしてどんな楽曲が…ぜひとも書店にてご覧ください。