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2021年06月24日15:26

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壁を見つめていた人、その5の2

 高級そうな石鹸をタオルで泡立てる。スポンジも置いてあったのだが、スポンジは使わない。タオルでなければいけないと性風俗嬢から教わっていたからだ。それが嘘か本当かは知らない。
 そして、泡を素手にとって奥さんの身体に塗って行く。まるで彫刻家が自ら掘った彫刻に最後に素手で触れるかのような愛着を持って触れる。華奢な肩、少しの肉しかつけていない背と胸と腰。太腿さえもが細い。その全てに、ゆっくりと触れて行く。目的は愛撫ではない。身体を洗うことなのだが、しかし、それは愛撫よりも慎重な動作で行うのだ。
「私の家はね。父も、母も、姉も、弟も美しかったの。見かけだけでなく、何もかもが美しかったの。だから、友達からは、ものすごく羨ましがられたの。でも、私は、あの人たちが嫌いだった。そうね。ドールハウスに迷い込んでしまったかのようで嫌だったのよ。ねえ、貴方、お尻舐めたとき嫌な顔したでしょ。臭そうな嫌な顔、私、見てたんですよ。恥ずかしかった。でも、好きなの。私の家にはね。トイレにさえ臭いも汚れもなかったのよ。たぶん、母がきちんとしていたんだと思うけど、だから、私たち子供も、きちんとしていたの。もう、少しのシミも許さないほど。あのね。トイレに入ったら掃除して出て来るのよ。そんな家、信じられる。ああ、うちの人はその逆、本当に汚いの。だから、今は、私、トイレに入る前に掃除して、出るときにも掃除しているのよ」
「正直、お尻には臭いも味もなかったんですけどね。だって、かなり綺麗にしているでしょ。分かっていたけど、そこは、ほら、ああしたことは遊びですから、うわ、臭いですよ、奥さん、みたいなほうが盛り上がるでしょ」
「エロ本屋さんて、そうなの」
「エロ本屋さんていうのは、そうしたものなんですよ」
 身体を洗ったら、奥さんを湯舟に入れ、浴槽に背をつけさせて、そのまま髪を洗う。むき出しの肩甲骨にかかる髪を指で梳かすようにしてシャンプーするのだ。同時に両手で頭皮をマッサージして行く。その間はさすがに会話が途絶えていた。
 シャワーを使わず、桶にためた湯で、ゆっくりと流して終了。リンスやトリートメントはしない。その女性によってやり方が違い、そこまでは分からなかったからだ。シャンプーを終えて筆者も浴槽に入った。
「まあ、もう、元にもどっているのね。さすがは若いのね」
 大人六人が同時に入れそうな湯舟なのに、筆者はあえて奥さんの背中の窮屈な空間に身体を差し込み、そっと背中から奥さんを抱えた。そのとき、筆者のそれが奥さんの骨ばった尻に当たったのだろう。
 後ろから、そっと耳を噛む。それも教わったままのことだった。
「貴方って、本当にエロ本屋さんなのね。こんなにスケベな男なんて、めったにいないわよ。それともエロ本屋さんは皆そうなの」
「はい。エロ本屋さんは、皆そうです。だって、そのためにエロ本屋さんになるんですからね。この性も、また、醜いでしょ。奥さんとしては好みなのでは」
「そう。好きなの。だって、人間臭いから」
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