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2020年07月28日00:48

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お洒落だったSМ、その1の2

 クローゼットルームを出て、しばらくは、ママと部屋の中を歩いていた。そして、ママが無言で指し示すものを撮った。フィルムは筆者が会社で現像して、一度、その全てをママに渡し、取材用にママが選んだ紙焼きの写真だけを数枚持ち帰るという条件だったので、こちらは、どういう物をとらされようと文句はなかった。男女の結合部。男性の自慢のモノ。果物。ナイフ。ブーツ。
 各部屋だけでなく、バスルームにも、トイレにさえドアがないことは、しばらくママと歩いていて、気が付いた。筆者が服と荷物を置いた部屋以外には、ドアがなかったのだ。開いているのではない。ドアそのものがなかったのだ。
「ねえ、ママ、その僕ちゃん、お借りしていい」
 ゆるいスーツ姿の初老の女がママにしなだれかかるようにして言った。僕ちゃんと呼ばれたのは筆者らしい。確かに、平均年齢が五十歳の後半と思われるそのパーティで二十代の筆者は僕ちゃんであった。
「もちろん。でも、見て分かっていると思うけど、役に立つのは舌ぐらいよ」
「いいのよ。そんなのいらないの。だって、お肌のリフレッシュしたいだけなんだから。吸わせてもらうのよ。若い肌のエキス」
「じゃあ、ベッドを一つ、空けさせようね」
 そう言ってママは、寝室にいた一組の全裸の男女に耳打ちした。二人はすぐにベッドを空けたが部屋からは出て行かなかった。どうやら、二人はカップルらしかった。仲良さそうに、ベッドの端に並んで座ったのだ。
 二人の目の前で、筆者は、女のスーツや下着まで脱がした。脱がすそばから、やはり全裸の老人がそれをきれいに畳んだり、ハンガーにかけたりしていた。
 当たり前のように、そして、まるでシナリオのある映画のように、初老の女は全裸のままベッドで俯せになった。筆者はオイルも使わずに、ゆっくりとその身体をマッサージしはじめた。いや、マッサージではない。若い自分の肌のエキスを彼女に移しはじめたのだ。
 パーティは午後五時からはじまり、深夜十二時まで続いたが、結局、三十六枚撮りのフィルムは一本しか使えなかった。取材どころではなかったからだ。
 お洒落で、怪しいパーティだった。それにしても、ドアはどこに隠したのだろうか。まさか捨ててしまったというわけでもないだろうに……。
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