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2018年12月31日00:53

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さて、次はどうするか、その3

 物に拘りのない人の人生は面白くない。物に拘るというのは、何も物が捨てられないとか、物を集めるとか、高級な物を買うとか、そうしたことばかりではない。いや、むしろ、物の拘りとして、捨てられないとか、集めるとか、そうしたことは、たいした拘りではないように思う。
 筆者がまだ若かった頃には、編集者は皆、文房具に拘っていた。嫌というほど拘っていた。当たり前だが、文房具という物は機能が重要なのだが、多くの編集者たちは、機能だけではなく美しさのほうに拘っていたように思う。万年筆は当たり前で、カッター、テープ、付箋にも拘っていた。最近の編集者はパソコンぐらいにしか拘りがないようで、それが少し寂しい。
 デザイナーの拘りは、さらに酷いものだった。もともとデザインというのは機能美を追及する仕事なので、デザイナーと言われる人たちは、着る物から持ち物、そして、消しゴムにいたるまで、とにかく拘りが強いのだ。彼らが、消しゴムの話だけで一時間近く酒を飲んでいるのは、それほど珍しい光景ではなかった。
 カメラマンは、少し危険だった。筆者はキャノンのカメラにニコンのストラップを付けていた。しかし、キャノン派のカメラマンは、そんなことだからお前は写真が下手なんだ、と、怒ったものだった。ニコンを卒業してキャノンになったのなら、全て買い替えろと言うのだ。ニコン派のカメラマンが聞いたら、もちろん、怒るような台詞なのだ。
 車はもちろん、靴にも、音楽にも、行く店にも、お酒にも拘っている人たちがいた。お酒なんて酔えればなんでもいいんだ、と、そう言いながらバーボンしか飲まないなどと言うのだ。しかも、ロック以外を認めない。
 そんな他人にとってはどうでもいいようことに拘る人の人生は面白いのだ。
 そこで、こんな企画はどうだろうか。一つの物から思い出す人について書いて行くのだ。モンブラン以外は万年筆と認めていなかった弱小出版社の社長。カメラよりもギターにお金を使っていたカメラマン。ラバーに拘った女王様。もちろん、コレクションの話もしないわけにはいかない。バイブのコレクター。食器のコレクター。そして、ピンクのコレクター。
 拘りではないが。悲しい鞭の話。不思議なポラロイドカメラの話。赤い首輪。捨てられないスーツ。割れた灰皿。いろいろな物に、いろいろなエピソードがあった。物を中心にそうしたエピソードを語って行くというのも面白そうだ。
「物の記憶」と、そんなタイトルでもいいかもしれない。それなら、物に語らせるのもありかもしれない。
 
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