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2018年12月13日15:36

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午後四時のエロ本屋

 午後四時も筆者はエロ本屋だった。
 午後四時にSМクラブの取材をしていることが多かった。四時から取材をはじめ、五時には終えるのだ。そうすれば、女の子たちは六時からプレイに入ることが出来たのである。筆者がSМ雑誌にかかわりはじめた頃には、そんな気遣いが必要なほどSМクラブは流行っていたのである。
 あの日も、午後四時にSМクラブ近くのラブホテルに愛らしい女の子と二人でいた。女の子は泣いていた。部屋に入ると泣き始め、最初は何を聞いても答えなかった。まだ、携帯電話のない頃だったので、仕方なくホテルの部屋から店に電話を入れた。新規参入の店で筆者も、まだ、それほど親しくないところの電話番が出た。
「女の子が泣いていて取材にならないんですけど、どうします。別の女の子を待っても、こちらはかまいませんが」
「いえ、お任せします。何とかその子でお願いします。取材に出られる女の子はその子しかいないし、新規参入であまり営業がよくなくて、取材してもらわないと、きついんですよ。ご迷惑おかけします」
 そんな乱暴な話があるだろうか、と、筆者は思ったが、とりあえず店には協力しておいたほうが得なので、もう一度、女の子と話し合ってみることにした。
「泣かれていたら、事情も分からないし、取材はして欲しいってお店も言ってるから、じゃあ、勝手に写真撮るよ。女王様じゃないから、泣いていても絵にはなるしね」
 そう言って、筆者は女の子の道具カバンから縄を出して、泣いたままの両手を縛った。何も言わないし、泣くことも止めないが、抵抗もしなかった。手首に縄をかけてカメラを向けた。シャッターを切っても抵抗しない。まさかと思ったがスカートをめくってみたが、やはり抵抗しなかった。パンツが見えるように足を縛った。カバンからバイブを出して足首の隣に置いた。それでも泣き止まない。抵抗もしない。
 面白くなって来たので、筆者は自分のパンツを下げて、自分のそれを取り出し、女の子の顔に近づけ、その様子を撮った。やはり抵抗しない。ますます面白くなったので、下半身裸になった。そして「オシッコを出すから口を開けて」と、そう言ってみた。女の子は泣きながら口を大きく開いた。その口に自分のそれを当てて「取材でそこまでさせないほうがいいよ」と、言った。女の子がクスリと一瞬だけ笑った。筆者は「口の中に直接オシッコしても写真には撮れないでしょ」と、言った。
「ああ、でも、君がされたいならするよ。セックスもしてあげるよ。でも、セックスってプレイじゃないよね」
「叱られちゃいます」
 はじめて口を開いた。
「君は叱られるけど、ボクは殺されちゃうよ」
「うちのオーナー、そんな怖い人じゃないです」
「じゃあ、どうして泣いてたの」
「実家の犬が死んだんです。ホテルに来るまえに心配で電話したら、死んだって聞かされたんです。でも、そんなこと言っても仕方ないし」
「ボクは、犬の真似が上手だよ。やってあげようね」
 筆者には、大型犬が人間の顔をいじるという芸があった。握った手で顔をいじりまくるのだ。それをやってあげると「実家の犬は、そんなに大きくないです」と、笑った。泣き笑いだ。
 オカルト雑誌をエロ本と並行して作っていたからだろうか。筆者は死の扱いに慣れているようなところがあった。悲しまないほうが犬のためだという、ありもしない理屈で女の子を説得した。
「さあ、取材に協力してくれないなら、本気で入れちゃうからね」
「入れたいですか、こんな泣いてばかりいる女なんかに」
「だから入れたいんだよ。こっちは変態だからね。変態だから変態本を作って、変態で飯食ってるんだよ」
 事実だった。そのままセックスにもつれ込むことも出来たのだろうが、それはしない。そこにいる女の子は他人の店の商品だからなのだ。取材では興奮したそれを治めることも出来ない。エロ本屋とは悲しいものなのだ。女にモテもせず、社会の底辺で生きているのだ。せっかくのチャンスにセックスする自由もない。それがエロ本屋というものだったのだ。
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