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2018年12月08日01:23

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午前十一時のエロ本屋

 午前十一時も筆者はエロ本屋だった。
 午前十一時という、その時間の代々木公園を一年を通して筆者はよく知っている。夏も冬も、午前十一時の代々木公園にいたからだ。午前十時の新宿待ち合わせ、そこで集合して、午前十一時に、代々木公園を目指すのだ。そこは、新宿からもっとも近く郊外の雰囲気の野外撮影が出来る場所だったからだ。しかも、ポルノはともかく、普通のグラビアのふりをしていれば撮影許可もとれた。堂々と撮影が出来たのだ。
 ところが、ここには、同じような考えのグラビア、アイドル撮影隊がいる。そちらは、モデルの女の子一人に対して男女十数人がぞろぞろと歩く。こちらは、四人か五人だ。向こうからすれば、あいつらはエロ本だな、と、そう分かりそうなのだ。惨めになる。しかし、女の子はもっと惨めな気持ちになるのだ。何しろ、年齢は同じような女の子がグラビアアイドルとして、大勢の男女に囲まれ、お姫様気分で撮影されているのだ。その同じ場所で、これから、気持ちの悪い、いかにもモテなさそうな男たちにアソコをいじられ、舐められ、縛られたり、場合によって、排泄までさせられるのだ。これが惨めでないはずがない。
 ところが、この惨めさが筆者たちに間違った火をつけるのだ。変態で何が悪い、エロで何が悪い、お前らだって、気取った仕事しているが、家に帰ればエロ本見てオナニーしているんだろう、と、そう思うのだ。向こうは、おそらく、こちらを意識もしていないだろうが、こちらはそこまで考えるのだ。それがエロ本というものなのだ。
 代々木公園は広い。少し奥に入れば、身を隠せる空間もある。基本的には、可愛いショットをそこで撮って、卑猥なショットをホテルで撮るのだが、惨めさが女の子との間で増幅されると、あえて、繁みに隠れて裸を撮ったりした。
「無理だよ、人が来ちゃうよ、見られちゃうよ」と、泣きそうに言う女の子も、言葉とは別に、けっこう興奮している。当たり前だが、代々木公園はそうした撮影を禁じていた。禁じていることをするから興奮したのだ。千葉のホテルやスタジオで撮影するなら、そこまでする必要はない、千葉まで行けばいくらでも野外で卑猥なシーンが撮れる場所があるのだ。代々木公園でそこまでする必要はないのだ。しかし、グラビアの撮影隊などを見たときには、何か間違った火がついているので、そこまでしたりするのだ。
「オシッコは無理。だって、出はじめて誰か来たら、急に止められないから。それは無理、無理です」
 と、言いながら、オシッコもする。しかも、立ったままでさせられる。カメラマンが少し意地悪だと、遠くにグラビア撮影隊が見えるような場所であえてさせたりする。表情が良いからなのだ。恐怖、不安、惨めさ、そして、少しの悦楽を伴った表情はなかなか撮れるものではないのだ。
 午前十一時になると、今でも、筆者は、あの代々木公園の夏の陽射しのことや、冬の風の冷たさのことこを思い出す。
 自然の情緒とか美しさなどエロ本屋には無関係だ。しかし、あえて、それと共にあろうとする、それも、また、エロ本屋の面白いところだったのだ。
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