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2018年07月30日14:25

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あれはやっぱり怖かった、その10

 夢を見ていた。夢の中で筆者はテレビを見ていた。テレビでニュースを見ていたのだ。ニュースは、高校生が肝試し中の事故で川に流されたというものだった。そこはホラースポットとして有名な場所で、高校生たちは深夜にバイク数台で河原に集まり、肝試しとして怪談などをしていたということだった。
 現場にいた高校生がインタビューを受けていた。七人で遊びに来て、怪談話などをしていると、一人が異常なまでに怯え出して、川のほうに向かって何かから逃げるように走り、そして、足を滑らせた、と、泣きそうになりながら語っていた。
 筆者はそこで目が覚めた。目が覚めると同時にテレビを付けた。ビジネスホテルのツインの部屋の隣のベッドには女性編集者が眠っていた。彼女はテレビを付けたぐらいでは目覚めないようだった。テレビは朝のニュースだった。昨夜の雨で川が増水し危険な状態にあると告げていた。筆者たちが深夜に撮影に出かける予定の川だった。雨は止んでいる。深夜には危険はないだろうと思いながらベッドに転がったままテレビを眺めていた。
 それだけのことだった。
 何も珍しいことではない。テレビを見ている夢を見て目覚めてテレビを付けたらニュースをやっていたというだけのことだ。内容は違う。高校生は死んでいない。
 そんなことを忘れて筆者は女性編集者とともに昼間の取材を終え、夜の八時ころに問題の河原で予定していた恐怖写真を撮った。その後は、少し離れた廃病院と幽霊が出るというトンネル、謎の公園を撮って、取材は終わりとなる予定だった。その夜は、宿泊せずに、そのまま出て、朝方には東京の編集部にもどり、編集部で仮眠して、そのまま、編集作業に入る。いつもの行動パターンだった。
 筆者たちが撮影機材などを車に入れて、さて、出ようかというときに、バイクが河原近くの空き地に入って来た。バイク五台で二台が二人乗り。七人なのだ。夢で見たニュースのことを思い出した。
 それだけのことだ。雨が降ったのは一日前なのだ。気にするようなことではない。
 筆者たちは、廃病院に向かい、予定通りの撮影をはじめた。その直後のことだった。食堂だったと思われる部屋のテレビが突然に付いたのだ。テレビは最近の病院では見られなくなったが、壁の高いところに備え付けられたものだった。テレビが付いたのは一瞬だった。
「な、何ですか、今の」
 同行していた女性編集者が叫んだ。
「今の河原、さっきの河原ですよねえ」
 と、彼女は悲鳴まじりに言った。
 テレビが付いたのは一瞬だった。筆者には何も見えていないし、聞こえていなかった。しかし、彼女は、肝試しをしようとバイクで集まった七人の高校生の内、一人が一昨夜の雨で増水していた川に流されて行方不明だと伝えていたと言うのだ。
 それは筆者が昨夜見た夢だと説明しても、彼女には分かってもらえそうにないので、筆者は何も言わなかった。そもそも、テレビが付くはずがないのだ。電気などきているはずがないのだから。
 東京にもどってから、筆者たちはニュースを気にしていたが、高校生が川に流されたなどというニュースを見ることはなかった。
 廃病院でテレビが付き、その直後に、彼女がニュースを見たと言ったときには、本当に怖かった。結果、誰も死んでいない。何も起きていないのだが、しかし、今、振り返っても、あれは本当に怖かった。
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