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2018年07月25日15:31

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あれはやっぱり怖かった、その5

 オカルト雑誌には、調査の依頼が多く入る。オカルトの編集者や記者と霊媒師とは無関係なのだが、読者には同じように見えるらしいのだ。実際、どちらも兼ねているような人たちもいた。筆者の勝手な想像なのだが、霊媒師を兼ねているような人たちの雑誌のほうが、そうでない儲かればいいという人たちの雑誌より売れていなかったように思う。
 そして、筆者も、そうした、いい加減なオカルト製作者の一人だった。
 心霊調査の依頼には、宿泊費目当てで応じていたぐらいなのだ。調査依頼のあった家に泊まれるとか、調査依頼をした人がホテル代を出してくれたりしたので、それでオカルト取材の経費を削減しようという目論見なのだ。
 あの頃、そんなところに行って怖くないのかと聞かれたが、怖くはない。そうした依頼のほとんどは痴情の縺れによる嫌がらせか、財産分与でもめているか、いずれにしても、人為的なものだったからだ。それも怖いと言えば怖いが、幽霊の怖さとは違う。
 少し話は脱線するが、そうした依頼で呪われた土地と言う話は、そのほとんどがこじれた遺産相続で、人形などの霊が出る場合は痴情の縺れだった。
 そして、その時の依頼は、呪いの人形だった。こうしたケースのほとんどが市松人形のような物なのだが、その話で出て来たのはフランス人形だった。これが、良くある話で、フランス人形が動く、歩く、閉じないはずの目を閉じる、口から血が流れた、と、そんなものなのだ。良く聞かされたところの人形話を全て集めたような話だった。そして、聞けば、年齢の近い姉妹がいるということだった。筆者は、ああ、姉妹が男を取り合ったのだと思った。
 その家は旧家で、筆者は人形のある部屋に泊まることになった。人形の調査なのだから普通のことだ。しかし、それで宿泊費が浮くのだ。依頼のあった秋田県には、他にも取材出来るオカルトがいくつかある。それらをセットして、編集助手の可愛い女の子と二泊三日の旅行が予定された。
 ところが、まず、当日に、同行するはずの女の子が風邪で倒れた。人手は他になかった。秋田まで車だというのに取材は一人になった。いつもなら編集部から出るのだが、自宅から出ることになった。同行者が誰もいなかったからだ。自宅近くの駐車場に行くと、葬式をしていた。大きな家なのか、駐車場の持ち主なのか知らないが、黒白の幕が駐車場まではみ出していたのだ。嫌な予感しかしなかった。
 黒いスーツの男の誘導で、参列者を避けるように車を出した。夏の夕方だというのに、すでに空は暗かった。そして、高速に乗る頃には大雨となった。ただの夕立だろうが、やはり嫌な予感しかしなかった。

 さて、この話。少し長くなるので、四話に分けようかと思う。
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