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2017年11月06日15:44

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封印したルポ(その4の1)

 あるSМクラブのオーナーに運転手として、秘密パーティに誘われたことがある。オーナーは車も免許も持っているのだが、どうやらパーティが貸別荘で行われるらしく、自分の車にはバーベキューの素材などを積み込むので、店の女の子全員は乗せきれないのだということだった。
 そこで、彼は筆者の車に女の子を三人ほど乗せて行って欲しいと言った。悪い話ではない。取材にはならないが、たまには、普通のSМを楽しむのも悪くない。バーベキューも悪くない。
 そう思って筆者は朝から車を出し、恵比寿で女の子三人を拾って長野に向かった。車中の女の子たちの会話はいつもながらに酷いものだ。SМクラブなのだから、運転したいМ男はいくらでもいることだろうに、わざわざ取材記者の筆者に運転手を頼むオーナーの気持ちが理解出来た。何しろ、会話のほとんどはお客の悪口か彼氏の話なのだ。どちらも、お客には聞かせたくない話なのだろう。
 貸別荘は少し離して点在させているらしく、隣に音などが聞こえる心配はなさそうだった。しかし、悲鳴のようなものや鞭音となると、やはり不味いのではないかと思った。離れているとはいえ、山の中の一軒家というほどではないのだから。
 筆者のそんな心配をよそに、パーティははじまった。どういうお客か分からないが、お客たちも車で集まって来ているようだった。カップルも単独の男もいた。単独らしい女もいた。その人たちが、普通に飲み、食べ、談笑しているのだ。お風呂は他の貸別荘の人と共有の露天風呂で、当然だが男女別である。
 これのどこが秘密パーティなのか、と、筆者はそう思った。
 筆者は運転に自信のあるほうではないので、翌日のことを考え、あまり深酒もしないまま、二階のテラスでぼんやりと山の夕暮れを楽しんでいた。何もないパーティ。考えようによっては、それもお洒落なのかもしれない、そんなことを考えながら、お酒ではなく、熱いコーヒーを飲んでいた。
 ところが、このパーティ。ただの、お洒落なパーティではなかったのだ。
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