褌女とスカート男（その７）

　サロンをはじめたばかりの頃。筆者は一人の女を取り合う男の間で悩まされた。自分の女を取った取らないでもめるのだ。取った取らないというが、女は物ではない。物ではないのだから、と、筆者は何度も言った。筆者の立場では仕方ないことだ。言いながら、ああ、でも、筆者にも、女を物と間違える傾向はあるんだろうな、と、そこについて深く反省させられたりしたものだ。
　もめ事のある一方で平和的な解決もあった。一人の女を共有するのだ。複数の男で一人の女を共有したりもした。男にとっては平和なことだが、これも女は物じゃない、と、そう言って戒めなければならなかった。
　ところが、いつの頃からだったろうか。そうした男たちはいなくなった。むしろ、一人の女に熱中し、恋人気分になりたがるのは男ばかりになった。嫉妬に狂う女と浮気三昧の男というのは、昔の話。今は、嫉妬に狂う男と、自由を楽しみたい女になってしまったのだ。
　ＳМとは、ダメな人間の性癖である。Мは物じゃない。物じゃないのに、物扱いしてしまう、そんな人間の性癖だったのだ。そもそも、М自身でさえ自分を物扱いしたがるぐらいだったのだから。
　それがどうしてなのだろうか。ＳМの世界に対等な恋愛の図式が持ち込まれてしまった。しかも、それを望んでいるのは、その大半が女ではなく男なのだ。寂しいことだ。