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2016年12月11日01:27

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話すほどでは(その8)

 あの頃、筆者は出来るかぎり多くのマニアに会い、そして、その話を聞いておきたいと考えていた。子供の頃に見た怪獣図鑑とか妖怪図鑑のようなものを変態で作りたい、と、そんな野望があったのだと思う。
 ゆえに、SМクラブの取材で、少しでも変わっているというお客の情報には敏感だった。そして、そうしたお客には、出来れば会って話をしたい、と、そう伝えてもらっていた。
 ところが、そうした話があると、決まって間違ったマニアが現れてしまう。とくにSにその傾向が強かったが、もちろん、Мでもあったし、風俗嬢にも多くいた。
 その男もそうだった。
 懇意にしていたSМクラブのママからの紹介だったので、彼の性癖は、そう変わっているとは思えなかったのだが、会うしかなかったのだ。
 四十代ぐらいの営業マン風の男だった。愛想よく笑うし、話も流暢だった。彼の口癖は「嫌だなあ、これも書かれちゃうのかなあ、書いちゃおうって思ってるでしょ」だった。
 しかし、彼の話には、書くべきものはひとつもなかった。
「酷い男でしょ。テレクラでナンパした女の子をいきなり縛っちゃうんですから」
 多くのSがそうしているのではないだろうか。そもそも彼はSМ専門テレクラでナンパしていたのだから。
「まあ、私は変わっているのかな。普通は女の子縛っても興奮しないと思うんですけどね。私はそれだけで興奮しちゃうんですよ」
 それについては、ほとんどのSがそうかもしれない。
「女の子が苦しいがっても、止めないんですよ。強引にセックスしちゃうんです。本当に鬼畜ですよね。まあ、これは、もう、一種の病気ですからね」
 と、それから口癖の「書かれちゃう」になるのだから、困ったものだ。何を書けと言うのか分からない。しかし、そんなマニアは意外と多くいたし、それだけは今も変わっていないような気がする。自分だけは、あるいは、自分たちだけは変わっている、と、そう思う人たちだ。どうでもいいことなのだが、今も多いような気がする。
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