無事にCT検査終了、あとは精算だけと自動支払機のほうに向かったとき、すぐ目の前の待合い長椅子にやや大きめの男物の長財布がポツンと置かれてあるのに気がついた。おそらく支払いを終えたどなたかが、そのまま置きわすれて帰られたのだろう。とりあえずどこかに届けないと。そう思ったまさにその瞬間、笹野高史に似た初老の警備員が目の前を通りかかった。
これはナイスタイミング。思わず彼を呼び止め落とし物ですと言い手渡そうとすると、彼は困った顔をして「すいませんが、警備室までお持ちいただけますか」と受け取ろうとしない。落とし物は拾得者が警備室まで持参するのがきまりです。やれやれと思いながら、B1防災センターのほうに向かった。まあ“大病院の舞台裏”を覗きたいという好奇心も多少あったけど。
そこはついさきほどCT検査を受けた場所のすぐ隣り、思わず苦笑。そして担当者が離席中とのことでしばらく待たされ、やがてこれまた初老の担当者がやってきて落とし物の中身を一緒に確認してほしいと。日本銀行券数枚そして小銭は1円の単位まで声をユニゾンにして数え、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、クーポン券、レシートその他もろもろ…。
無事持ち主の手にもどったとき、お礼うんぬんの話が生じる可能性があるからこちらの氏名・連絡先等を残せと言われたが丁寧にお断りした。その長財布のセンスそして内容物から、持ち主は脂ぎったオッサンが想起され、わざわざ会うのもなんだかやっかいだと思ったからだ。じゃあいったいどんな落とし物だったら名前等を残すの、と訊くかもしれないけどそれはまた別の話。
まあどちらにしても一番最初の時点で「はい、落とし物です」と警備員に渡しておしまい、というわけにはいかなかったということ。これはその場所が大病院だから?それともいまの時代だから?サービス業・接客業・不特定多数のひとが集まる場所で働いているかたにとっては、こんなシステムって当たり前のことなんでしょうか。
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