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2015年05月29日19:44

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サンドラの週末

 週末。
 なんと魅惑的な響き。映画を観たり山に行ったり、古い友人と久々に飲んだくれたりできる、まさに「命の洗濯」の時間。

 でも「サンドラの週末」のヒロイン、サンドラにとっては大きな試練の時でした。
 太陽発電パネルの工場で働いていた彼女は体調を崩して休養中(説明はありませんがメンタル面の不調のようです)。ようやく症状が改善されたので間もなく職場復帰のはずが・・・、サンドラを待っていたのは非情な解雇通告でした。
 同僚で友人のジュリエットの協力で、他の同僚達の投票によってサンドラの去就が決定されることになったのですが、もし仮に彼女が票の過半数を獲得して復職と決まったら従業員全員のボーナスをカットという方針が打ち出されます。
 皆に迷惑をかけてまで、自分は職場に復帰していいものか? 迷い悩みながらも彼女は、本来なら楽しく穏やかな時間であるはずの週末を費やして、仲間たちの説得に当たるのです。

 自分以外の誰かを訪ね歩き、そのことで、それまで全く知らなかった世間の姿や他者の生活に触れ、生活者としての強さ逞しさに目覚めていく。サンドラにとってこの週末の2日間は病気によって失われていた「生きる力」を取り戻すための時間だったのですね。

 サンドラに投票した人も、ボーナスを選んだ人も、皆それぞれがいろんな事情を抱えた市井の人々です。生活が苦しく、週末もバイトしなければ家族を養えない人もいます。また、かつてサンドラに仕事上のミスをカバーしてもらったことを思い出して涙を流す優しい男性もいます。しかし中にはあからさまに彼女の訪問を迷惑がり、居留守を使う者もいます。以前は仲良くしていたにもかかわらず。
 組合を持たず、会社のいいなりになるしかない非力な労働者たちの打ちひしがれた心、苦しい生活からくる疲れや諦め。その一方できらりと光るささやかな善意と勇気。
 そういったものが、本作では丁寧に掬い上げられ、優しく厳しく描かれています。

 説得に疲れ、何度も何度もあきらめ挫けそうになるサンドラ。どんなに辛くても子供たちの前では懸命に涙をこらえる彼女を見て、私は思いました。
 なぜこの人は、こんなに苦しまなければならないんだろう?
 夫と二人で家庭を守り、ささやかな暮らしを営んでいこうとしているだけなのに、どうして無用な辛酸をなめなけれなならないんだろう?
 ラストシーンでのサンドラの笑顔に、多少は救われた思いがします。でも、そこには手放しの喜びや希望はありません。
 彼女が歩き去っていった道を次に歩くのは、私かも知れないのです。

 
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