喫茶店で何が大事かと言えば、やはり、一番は店の雰囲気だった。別に綺麗であればいいとか、雑然としているのはダメだとか、生活感のあるのは嫌だと言うのではない。地方取材のとき、たとえばそれが大阪や博多や札幌のような都会だったとしても、筆者には知らない土地なので、そこで少し寛ぎたい、と、そう思ったときには、生活感の漂うおばちゃんのやっているような喫茶店でコーヒーが飲みたいし、何かを書こうという気分にどうしてもならないようなときには、店主の趣味が色濃く出ているような喫茶店がいい、と、そう思うものなのだ。
ただし、取材の後は、シンプルなチェーン店の喫茶店がよかった。それは、取材を記録するときには、なるべく余計なイメージを持たされたくなかったからなのだった。
SMクラブも同じだった。風営法の影響でSMクラブはプレイルームを持つことが困難になった。筆者はSMクラブというものは、プレイの内容でも、そこにいる風俗嬢でもなく、プレイルームにこそ、その価値があると考えていた。
喫茶店と同じで、それが綺麗だとか豪華だということではないのだ。
中世ヨーロッパの地下牢獄。そんなプレイルームがあった。もちろん、壁紙などを利用して、それらしく作っているだけで、石も鉄格子も本物ではなかった。しかし、それでよかったのだ。いや、それがよかったのだ。
ログインしてコメントを確認・投稿する