コーヒーの味など本当に分かっているのだろうか。筆者は、今も、ときどき、そのことを疑問に思うことがある。美味しい不味いと感じていることは確かだ。しかし、それは本当に正確なのだろうか。
たとえば、美味しいと感じたコーヒーと全く同じものを別のところで飲んで不味いと感じていたりはしないだろうか、と、そう思うのだ。
それが取材後のコーヒーとなれば、なおさらだった。何しろ、取材の後の喫茶店など、どこでもよかったのだ。コーヒーの味も値段も店の雰囲気もどうでもいい。取材後は、少しでも早く喫茶店に入りたかった。理由は二つだ。取材の緊張を緩和したいというのと、もう一つは、取材を早急に活字化しておくということだった。
インタビューなどは取材後、一時間以内に録音を活字化するのと、一週間後にそれをするのとでは、それに要する時間が数倍かわるのだ。時間を節約するなら一時間以内に雑でもいいから一度活字にしておく必要があった。
そんな状況なので、コーヒーの味など、どうでもいいし、そもそも、コーヒーはテーブルを借りるための道具でしかないので、冷めきった後に、あわてて飲み干すようなことが多かった。しかし、それでも、美味しくコーヒーを飲むこともあった。仕事を忘れ、のんびりと、コーヒーを飲んでしまうことがあったのだ。あの取材がそうだった。
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