新宿ミラノ座

　私が始めて新宿ミラノ座に行ったのは、昭和五十九年三月二日。観たのは「トワイライト・ゾーン」でした。
　平日の最終回とあって場内はガラガラでしたので、一つのエピソードが終わるたびに席を替えてみたりして、「劇場の広さ」を大いに堪能しました。
　
　そう、新宿ミラノ座はとてつもなく大きな映画館だったんです。

　それまでにも東京の映画館にはあちこち足を運んでましたが、そのほとんどが池袋文芸座とか八重須スター座とか新宿ローヤルといった名画座ばかりでして、いわゆるロードショー館には足を踏み入れたことがなかったんですよ。
　ですから、あの大きさは本当に驚異。どこに座ればいいものか、と、しばし途方に暮れたくらいでした。

　その大きなミラノ座で通勤ラッシュ顔負けの混雑に遭遇したのが「マッドマックス　サンダードーム」。昭和六十年六月三十日のことです。
　いやー、あれは凄かった。ロビーで次回上映を待ってる間のあの暑さ！冷房が入ってるはずなのに、待ってる人が多すぎて効きゃしないんですから。辛うじて座って観ることはできましたが、前から三列目のほぼ右端というキツいポジションでしたねえ。


　他にもいろんな思い出のある新宿ミラノ座が、とうとうなくなってしまいます。

　私のような田舎者にとっては千席を超える客席を有する映画館は、長い間、憧れの的でした。やっと自由に東京で映画を観られるようになった時にはすでにテアトル東京も旧日劇もなく、有楽座や日比谷映画劇場も通う暇もなく閉館。だからミラノ座は本当に夢の空間でした。松竹・東急系で配給される大作はやっぱりここで観なければ！ってなもんでしたねえ。

　２０１４年の私の最後の映画鑑賞は、新宿ミラノ座ラストショウ「タワーリング・インフェルノ」。
　この作品を最後の上映のラインナップに入れてくれたこと、心から感謝します。

　ミラノ座さん、本当にお世話になりました。ありがとうございました！