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2017年05月16日23:01

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ウィリアム・テンを読む

50〜60年代に短編の名手と謳われたSF作家は枚挙にいとまがないが、ウィリアム・テンもその一人だ。全集と何かのアンソロジーで一作だけ読んだことがある。『クリスマス・プレゼント』という短編だ。未来のデパートの生命創造キットが届いてしまうという、いかにもレトロな話だった。まとまった日本語訳は、創元文庫の短編集二冊のみ。神田でまとめて買った。まず一冊目から。

・ウィリアム・テン短編集1(65)
期待以上だった。軽快でシニカルで機知に富んでいる。これこそSF短編というお手本のような作品集である。味わいはバラエティに富んでいて、ほとんど古びていない。私はSFは時の流れに対して耐久性の強いジャンルだと思う。数万年・数億年のスパンで発想するSFは、百年やそこらでは劣化しない。もちろん傑作に限った話だけど。一般に言われる「現実に追いつかれるから、SFはすぐにダメになる」というのは間違いだ。むしろ時間経過で読むに堪えなくなるのは、ミステリに多い。
横道にそれたけど、印象深い作品を挙げると、

・ノアの時代
自宅に核シェルターを持つ一家がいる。懐かしいなあ。子供のころ、うちにもパンフレットが届いて両親が悩んでいたのを覚えている。もしもの備えは、使わないほうが幸福なのだが。最後の父ちゃんのセリフは感動的だ。現代ならいっそう同感できる。手遅れにならねばいいが。
・ブルックリン計画
タイムトラベルをしても、現代の我々には影響しない。科学者が新聞記者たちに説明している。影響はない・・・が、何か様子が変だ。衝撃度はナンバー1。30分ほどで映像化すれば凄い話になると思うが、SFファン向けの「考えオチ」なので、それ以外の人には向かないかな。

・針路を東へ!
核戦争後のアメリカでは、人種の地位が逆転している。先住民の顔色をうかがいながら追い詰められる白人が哀れで笑える。逆転したアメリカ開拓史だ。オチは爆笑ものだ。
・「もう少し速く歩いてくれないか」
宇宙人たちは、人類が全滅して地球が空き家になるのを待っている。協定によって、直接武力を行使することはできない。あくまでも自滅してほしい。彼らの手段がリアルに怖い。

・それはかちり、かちりとちらついて終わる
落丁かと思った。現状を変えようとする計画は、タイムループに囚われる。
・宇宙のリスボン
ポルトガルの首都リスボンは、二次大戦中に各国のスパイが火花を散らしていたそうだ。現代のニューヨークで何種ものエイリアンがスパイ戦を展開している。サスペンス満点のスパイパロディだが、オチが弱い。

・男性の反乱
ナンセンスな政治SF。女性の台頭に反抗すべく、中世ヨーロッパの金玉袋が復活した。政争や派閥争いの戯画化が愉快で洒落ている。

質の高さとバラエティに感心した。語られることの少ない作家だが、大のお気に入りになった。日本版ウィキペディアに名前さえでていないのは気の毒だ。★★★★★
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