ソフィア・コッポラ監督最新作。エルヴィス・プレスリーと出逢い、恋に落ちた14歳のプリシラ。両親の反対を押し切りメンフィスの大邸宅でエルヴィスと暮らす彼女。すべてを手に入れたように思えた日々だったが、そこに待っていたものは・・・。製作者のひとりに名を連ねることし78歳プリシラの著書「私のエルヴィス」が原作。
主演のふたりにさほど著名ではない若手俳優を起用、作品へのみずみずしさ注入に成功。ケイリー・スピーニーが14歳から20代後半までのプリシラを違和感なく見事に表現、いっぽうジェイコブ・エロルディが演じたここでのエルヴィスは、その体躯や物腰がもたらす雰囲気から、あまりにも唐突ながら大谷翔平をイメージしてしまった。
贅沢な暮らしを重ねながらも、孤独感と疎外感にさいなまれるプリシラ。いわゆる公の場はほとんどなく大邸宅内部とその周辺だけで物語は進む。彼女の心の揺れがこの作品の味わいどころ、かっての「ロスト・イン・トランスレーション」のシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)同様、コッポラ監督が描く独特の寂寥感がここに。
音楽もまたしかり、エルヴィスを素材にしながらもど真ん中のストレートを投げず、あえて周辺部をなぞるところもまたコッポラ監督の妙技。劇中に何度お召し替えしたことかプリシラ、60'sセレブのファッションクロニクルとしても面白い作品だなと思っていたら、サポートしていたのはきっちりシャネルとヴァレンチノでした。
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