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2021年10月02日15:50

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「由宇子の天秤」〜重いのはどちらか

妥協を許さないドキュメンタリーディレクターの由宇子(瀧内公美)は、テレビ局との対立をくり返しながら、女子高生いじめ自殺事件を追う番組制作にいそしむ日々。その一方で父親(光石研)の経営する高校生相手の学習塾を手伝い、あることから生徒のひとり萌(河合優実〜「サマーフィルムにのって」のビート板!)と親しくなる。

そして由宇子の身辺にとんでもない事実が発覚する。それは彼女が追う事件以上に、いかにも歪んだ現代社会を反映した衝撃的なものだった。観る側は、もうドキュメンタリー制作の仕事は放っておけ、その衝撃の収束に専念しろという気持ちになってくる。双方の事実の前で揺れ動く由宇子、タイトルの”天秤”の意味がここでくっきりする。

ところが話はこれだけで収まらず、さらに辛くやるせない方向に進んでいく。観る側はノーテンキにも、よくここまで話を重ねるなあとその発想力に感心する。それはあまりにも過酷な状況ばかりが目の前を通過するので、あえて客観視したい心理が働くからだろう。ちなみに監督・春本雄二郎(「かぞくへ」)によるオリジナル脚本。

「司法は許しても、社会は許さない」という由宇子の言葉が印象的。もちろんいまに始まったフレーズではないけれど、現代のSNS情報社会ほど、この言葉が重みをもつ時代はないはず。賛否が分かれるであろうラストシーンを筆頭に長回しを多用、作品そのものがドキュメンタリーの匂いただよう、心に重く突き刺さる傑作でした。
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