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2019年07月16日00:51

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深い記憶の底のエロ本、その10

 忘れられない雑誌に「夜園」というのがあった。ヤエンかヨルエンか、あるいは、もっと別の読み方があったのかは分からない。何しろ、その後の雑誌ように、アルファベットを飾りとして、あしらうなどという時代ではなかったのだから。
 この「夜園」とう雑誌は内容が面白かった。装丁のほうは、教科書サイズの薄い雑誌でグラビアどころか表紙さえ一色刷りという簡素なものだった。扱われていたのは性的サークルばかりだったのだ。同じ頃に、映画雑誌や音楽雑誌では、バンドやファンクラブやサークルの募集記事を掲載するというのが流行していたのである。映画や音楽雑誌なのに、芸術や詩、演劇、ゲーム仲間を募集しているようなものもあった。それのエロ版というわけだったのだろう。
 雑誌ページの大半は、この募集記事で埋められていたのだが、わずかに普通の記事もあった。そこにはマニアサークルの活動報告とか、秘密パーティの取材とか、SМサークル主催者のインタビューなどがあった。これが面白かったのだ。
 そうした雑誌なら、そこに出ているのは性風俗業者の広告記事のように思うのだが、筆者が記憶しているかぎり、業者の参入はほとんどなかったように思うのだ。
 スワッピング、乱交、SМはもちろん、ちょっと危ないものには、痴漢仲間の募集とか、互いの奥さんを犯し合う仲間の募集なんていうものもあった。どこまで本気だったのか、実際に、そんな募集で仲間が集まっていたのかは分からない。パーティの誘いも多くあった。パーティの多くはオシッコパーティで、ピスサロンとかピス愛好会などとされていた。もしかしたら、飲み合う会とかけ合う会は別の名称になっていたのかもしれない。面白そうなものに獣のマスクだけを被って全裸で参加するパーティというのがあった。このグループは大きいのか、一ページを使っての募集記事で、しかも写真まで掲載されていた。ただし、印刷が悪い上にモノクロなので、詳細は分からない。詳細は分からないものの、しかし、その会場や全裸の男女の持つグラスなどから、けっこう豪華なパーティなのではないか、と思われた。
 この雑誌は、不定期ながら、数号出ていたと記憶している。ただし、売っていたのは書店ではなく、大人の玩具屋という特殊ルートだったので、なかなか入手が困難だった。
 思えば、あの頃、この大人の玩具屋にしかないという本は少なくなかった。その多くは「ハッテン場ガイド」という同性愛者の集う場所の情報雑誌だったが、その中には「夜園」のような特殊なものもあったのだ。
 最近は、この大人の玩具屋も、ずいぶんとメジャーになり、昔のような如何わしさがなくなってしまったが、昔は、けっこう如何わしい店が多かったのだ。
 筆者は、エロ業界に入ってから、この大人の玩具屋ルートで本を作っていた人を探したのだが、見つかったことは、ただの一度もなかった。ただ、大人の玩具屋の経営者の話では、そうした人は、大人の玩具屋では正規の問屋ではないところから「カバン屋」と呼んでおり、個人がカバンに商品を入れてそれを店に委託で置いてもらいに来ていたのだと言っていた。本当かどうかは定かではない。
 あるマニアが自ら雑誌を作り、それをカバンに入れていかにも怪しい大人の玩具屋で売るという、そんな興味深い話があったのだ。嘘か本当かではなく、そんな話があったというだけでも面白いではないか。
 インターネット時代となり、そんな個人の嗜好に特化した趣味のサイトが増えるかと思ったのだが、インターネット時代は、逆に、いかにもビジネスに特化した映像や写真サイトばかりが増えた。ある個人のある人たちにしか通じないほどマニアックな作品。そんな記事を読むことはもう出来ないのだろうか。もう、読めないのだとすれば、それは寂しいことである。

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