「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」観て来ました。
いやー面白い! これは面白い!
お話は至ってシンプル。自分たちのいたずらのせいで行方不明になった牧場主を探すため、ショーンとその一行が都会で冒険を繰り広げるというもの。
街へ行って、帰ってくる。これだけの展開の中に詰め込まれたエンタテインメントの要素が、もう、ただごとじゃないくらい豊富なのが本作の見どころですね。
例えば、呆れるほど豊かなギャグ・アイディア。TVシリーズ同様、よくもまあこんなこと思いつくなあ、と感心するようなギャグがあちらこちらにちりばめられてます。未見の方のため詳しく書けないのがもどかしいのですなあ。
ちなみに昨日の新宿ピカデリーで一番ウケてたのは、ショーンが動物捕獲センターに監禁される件り。映画ファン向けの小ネタから抱腹絶倒ものの繰り返しギャグまで、とにかく笑いの絶えないシークェンスでしたね。
物語の骨子は「オタカラ探し」の趣向でした。
そのオタカラとはもちろん、行方不明の牧場主。ショーンたちが牧場主のもとにたどり着くまでのプロセスが、微妙なすれ違いや捜索ヒントの挿入などによって極めて古典的なマンハントものとして成立しているのが、いいです。
さらに牧場主を発見した後も、彼の記憶喪失という「物語上の障害」によってサスペンスを持続させ、果たして絆を取り戻せるのか?無事に家へ帰れるのか?という興趣を盛り上げております。
海外のアニメでは魅力的な脇キャラが多く登場しますが、本作も同様。動物捕獲センターでショーンの脱走を手助けする名もない野良犬、これがもう、実にナイスな奴なんですなあ。
野良犬として誇り高く生きながらも、心のどこかで「優しい飼い主」を求めているそのいじらしさ。センターに動物を引き取りにやってきた「善良な市民」に無視された彼(彼女だったのかなあ?)が涙を流すシーンなど、思わず目頭が熱くなりました。
ディケンズの「オリバー・ツイスト」に出て来てもおかしくないようなこのキャラクターが後半で素晴らしい活躍を見せるのですが、これはもう、観てのお楽しみ、ですね。
アードマン・スタジオの作品って、至る所にホラーやスリラーのパロディを忍び込ませたものが多いのですが、本作も例外じゃありません。
「羊たちの沈黙」ネタのようなわかりやすいものもありますが、私が驚いたのは「狩人の夜」のパロディ。あの作品ではロバート・ミッチャムが手の指に「LOVE」「HATE」という入れ墨をしているのですが、本作に登場するあるキャラクターがそれをやってるんですね。これにはひっくり返りました(もっとも「HATE」じゃなくて「BITE」になってましたが)。
あと、恐怖の動物捕獲係・トランパーが、やっと農場にたどり着いたショーンたちにしつこく襲いかかるシーン。ここでトランパーが手にしているのはなんと、巨大な鎌。あれを見て「悪魔の沼」のネヴィル・ブランドを思い出した人は相当なゲテモノ好きでしょう。
「マッドマックス 怒りのデスロード」も、思えば「行って、戻ってくるだけ」の話でした。そんな単純さの中に、ありったけのアイディアとディテール描写、そして個々のキャラクターのドラマを盛り込めば上質なエンタテインメントが完成することをあの作品は見事に証明してくれましたが、「ひつじのショーン」も同様。
やはり活劇やコメディはシンプルなのに限りますね。
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