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2016年08月08日15:36

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編集者の本当の仕事(その10)

 予備校の先生も先生である。学校の先生も先生である。両者の違いはどこにあるのだろうか。たいていの子供は学校の先生に対してはいろいろな印象を残していていも、予備校の先生についてはたいした記憶を残していなかったりする。
 どうして、そんなことを書くのかというと、編集者というのは、当然のことながら予備校の先生に近い仕事をしているからなのである。予備校の先生は、実は先生と呼ぶのには相応しくない。むしろ受験請負人なのかもしれない。受験におけるコーチと言うことも出来るかもしれない。
 どこが、もっとも違うかと言えば、学校の先生が生徒の人生について考えているのに対し、予備校の先生は生徒の人生については考えていない。目の前の試験に合格するか否か、考えなければならないのはそれだけなのだ。そして、それだけで十分なのである。
 編集者はしばしば作家の人生に踏み込んでしまう。それは、編集者の仕事ではない。作家の将来の心配など編集者の知るところではない。もし、そうしたことを言う編集者がいたら、その人は怪しい。
 編集者というのは、一つの作品を作ろうとしている作家に対し、その支援を惜しまない人のことなのである。作家を導く者ではないので、ここを間違えてはいけない。
 予備校の先生が受験のあらゆるテクニックを駆使して、テストで要領よく正解を出す方法について研究しているように、編集者はあらゆる作品において、それが効率よく読み手に伝わるように考えているのである。
 つまり、予備校の先生が学問の本質について生徒に教えることを目的としていないように、編集者も文学の本質について作家に教えようなどとしてはいけないのである。編集者がやることは、ただ、目の前の表現が効率的かどうか、もし、効率的でないとするなら、どうすれば、より効率的に伝わるのか、それを考え、作家にそれを実践してもらうように工夫するのである。
 編集者にとって大切なことは文学ではなく、ただ、文章の効率なのである。
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