昨夜遅く、チャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」を観ました。
・・・これ、こういう映画だったんですね。
ニューヨークに住む裕福なリベラリストの建築技師が強盗に妻を殺され、娘をレイプされたことをきっかけに、街に巣食う無法者たちに正義の鉄槌を下す物語・・・だと思ってたんですが、これがまあ、全然違っておりました。驚愕。
そもそも、妻子があんな酷い目に遭わされたにもかかわらず、主人公がちっとも悲しんでいるように見えないんですよ。怒りはするけれども。
で、やがて夜の街に出かけてはチンピラどもを手にかけるようになるんですが、最初は自分の行為に怖じ気づいてゲロ吐いたりするものの次第に慣れて来て、妙に明るくなってくるんですね。しまいには妻が殺された部屋の壁を黄色に塗り替えて、ジャズかなにかのレコードを大音量でかけまくったりするようになるのです。
つまりこの作品は、理不尽に幸福を奪われた男の哀しい復讐劇などではなく、不幸な事件をきっかけに、自分の中の嗜虐の血に目覚めた男の話だったんです。
シカゴに移り住んだ主人公が駅で暴れるチンピラを見かけ、彼らに向かって拳銃を撃つフリをしてニヤリと笑うというラストシーン、心底ゾッとしましたよ。
それにしても監督のマイケル・ウィナー、演出の切れ味が半端なく鋭いです。こんなにテキパキと話が進む映画って、最近あまりないんじゃないですかね。全く無駄がありません。本作のブロンソンの肉体と同じくらい、ぜい肉がないんです。上映時間がわずか92分というのも驚き。
この監督の60〜70年代の仕事をじっくり検証してみたいものですね。
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