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2015年02月26日13:43

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末木文美士『日蓮入門』

 末木文美士『増補 日蓮入門 現世を撃つ思想』(ちくま学芸文庫、2010年)を読了。戦前において日蓮は国家主義的に解釈され、戦後は民主主義・平和主義・合理主義の立場から再解釈された。戦前に日蓮研究はかなりの水準に達したが、戦後の研究はその批判の上に大きな成果を挙げてきた。
 しかし、それは余りに日蓮を単純化してしまうかも知れず、最近は戦後の日蓮研究を再検討する機運が出てきている。例えば国家主義的な要素が大きいとして戦後は偽撰説が強かった『三大秘宝抄』はコンピューター解析の手法を用いて真撰説が主張された。伝統的な天台教学との関係なども日蓮の多面性を尊重しながら検討しなおされている。
 日蓮は日本天台宗の開祖とされる最澄に範を取り、排他的でありつつも総合的な仏教の確立を目指した。念仏・禅・律・真言などの他宗を日蓮が批判したのも、それら諸宗の要素を全て換骨奪胎したからだった。同時代の仏教者たちも多様な仏教の総合を目指しており、日蓮思想は時代に共通する背景を以ていた。
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