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2015年09月23日20:04

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嶋中博章『太陽王時代のメモワール作者たち』

 嶋中博章『太陽王時代のメモワール作者たち 政治・文学・歴史記述』(吉田書店、2014年)を読了。ルイ十四世の治世は動乱の時代で、少なからぬ人々が人生の浮沈を経験し、その身に起こった悲喜こもごもをメモワール(回想録・覚書)という形で後世に伝えた。ところが、十九世紀の後半から「実証主義的史学」が浸透するに連れ、メモワールが持つ史料的価値に疑いの目が向けられるようになり、メモワールは史料としてよりも文学作品としての評価を得た。
 しかし、歴史は事実を扱い、文学はフィクションを扱うと区別されるが、フィクションは「架空の要素」ではなくて「物語の技術」であることを想起すべきだろう。十七世紀後半のフランスは文学と政治が密接な関係を持ち始めた。メモワールもこうした時代の産物で、歴史のある時点において誰かが読者に語りかけて証言・説得する。
 一種の政治的・社会的行為としてメモワールは歴史が書かれていると考えることも出来る。メモワールの「行為」が引き起こす「作用」は未来にも開かれている。歴史家は史料を批判的に分析すると言うが、今日の歴史家が史料のフィクションに操られることも起こり得る。
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