・トム・ゴードンに恋した少女(1999)
作:スティーヴン・キング
キングの作品は二十年ぐらい前までは、ほぼ全部読んでいた。リアルな筆致に夢中になったものだ。世紀を越えた辺りから人間のマイナス面を強調する作風が鼻について遠ざかるようになった。
本屋で見かけて手頃な厚さなので読むことにした。9歳の少女がハイキング中に迷子になってしまう。それだけの話である。シンプル極まりないプロットを力量で読ませる。キング健在なり。
両親が離婚しており、兄は学校で孤立している。作者らしい嫌な出だしだが、あっと言う間に緊迫感溢れるサスペンスに飲み込まれる。雀蜂や蚊の大群に苦しみ、高所から滑落する。死の恐怖と戦う彼女の支えとなったのは、ウォークマンで聴く野球中継であった。レッドソックスの守護神トム・ゴードンがしばしば幻影として現れる。
40年近く昔に球場に通いつめた頃を思い出した。私にとっては近鉄の吉井か西武の潮崎だ。懐かしいなあ。本作を読んで野球の面白さを再認識した。メリハリがはっきりしている所がいい。サッカーがいくら流行しても見る気にならないのは、同じテンションが続いて山場が分かりにくいから。サッカー選手では彼女の支えになれないだろう。
最終回の盛り上がりは秀逸である。




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