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2025年06月16日18:18

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「法王の牙」

・法王の牙 病院サスペンス集 作:黒岩重吾
1960ー1972年に書かれた短編を六作収録する。いわゆる医療ミステリではない。病気や病院が重要なポイントになる作品を集めた風変わりなコンセプトである。作者は成人後小児麻痺にかかり、苦しい闘病生活を送ったとか。そのせいで病気や医療現場に強い関心を抱くようになった。医師の書いた作品と対極にある患者視点が興味深い。
「病葉の踊り」「深夜の競争」は長期入院患者の鬱屈した心情を描く。鬼気迫る恐ろしさだ。後者に二人の部位の異なる麻痺患者が、深夜の廊下で徒競走をするシーンがある。俺の方があいつよりましだ、と言いたいのか。現代なら映像どころか小説も掲載できないだろう。でも、人間の心情として有りそうなことだ。
表題作は外科医が主人公で、学閥の闇を描く。劣化した短縮版「白い巨塔」という感じだ。凡作。
「さ迷える魂」はハイミスの看護婦に恋が芽生える。

「造花の値段」大企業の係長代理が癌にかかり、会社の機密書類を盗んで人生最後の散財を企む。生臭い欲望が八方破れの行動を起こさせる。倫理的には論外だが、妙に共感できてしまう。
「最後の踊り」主人公が病院事務長というだけで、特に医療とは関係ない。中年過ぎて持ち込まれた見合い話が波乱を呼ぶ。
男女の生臭い話はあまり好きなテーマではないが、作者が描く性愛にはなぜか心引かれる。★★★★
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