・雁の寺/越前竹人形 作:水上勉
直木賞受賞作と映画の原作を収録した本だ。
「雁の寺」(1961)
絵描きの愛人から禅寺住職の愛人へとシフトした女の視点で、昔の日本の田舎が語られる。生臭く俗っぽい。男尊女卑の時代は、いま読むとまるで異次元世界である。古きよきとはとても呼べないが、不思議と惹き付けられる。異様な風体の小僧は、住職にこき使われており、女は同情半分で抱きしめるのだが。
終盤の事件で世界が一変する。閉鎖空間における淫靡な人間関係が強烈な印象を残す。
「越前竹人形」(1963)
映画はストーリーを再現しているが、印象はかなり異なる。原作の喜助は矮小な醜い男で、それゆえ玉枝に寄せる愛情は切実である。映画の喜助は普通に男前だ。そりゃ俳優だから。単なるシャイな田舎者に見える。原作の持つ陰性の迫力が削られているが、娯楽作として成立させるための配慮であろう。映画には玉枝の同僚(中村玉緒)が二人の理解者として登場し、救いになっている。彼女は映画オリジナルで、原作には登場しない。
本作は陰惨な悲劇で、映画は美しい純愛物語だ。芸術性は原作の方が勝っている。★★★★★
ログインしてコメントを確認・投稿する