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2024年04月28日16:49

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シャドーメーカーズ

 「キリング・フィールド」のローランド・ジョフィ監督が手がけた原爆開発秘話「シャドーメーカーズ」、観てみました。
 あの「オッペンハイマー」とはまた別の視点でマンハッタン計画がどう描かれたのか興味がありまして。

 正直、ドラマとしてはかなり平板で盛りあがりに欠け、お世辞にも上出来とは言いかねる作品ではあります。「オッペンハイマー」でも描かれていた、オッピーと共産主義者との関わりや彼の女性関係に加え、科学者たちの道義的葛藤にもきちんと触れられてはいますが何とも通り一編でうねりがなく、単なるエピソードの積み重ねに終始してるんです。
 でも、私はこういう真面目な映画って嫌いになれないんですよね。作り手の誠実さは必ずしも出来栄えに結びつかないけれど、こういうデリケートな題材に正面から挑んだということに関しては評価したいです。

 それにしても、ポール・ニューマン演じるレスリー・グローブス将軍の、なんとも感じの悪いこと。冒頭でマンハッタン計画の遂行責任者を命ぜられる場では「俺は前線で戦いたいんだ!」とパットン将軍みたいなことを言ってゴネまくるし、シカゴ派と呼ばれる科学者グループから原爆の実戦使用をせず公開実験によって威力を示すよう提案される場ではキレまくるし、軍人官僚の傲慢さが丸出し。「オッペンハイマー」でマット・デイモンが演じたグローブス像とはかなり違ったものになってます。
 まあ「シャドーメーカーズ」はかなりフィクション色が強い作りになっていますので、本作でのグローブスは意図的に「嫌な奴」にされたんでしょうね。何が何でも原爆投下!と言い募る彼の姿を見ていると、東京大空襲を指揮したカーティス・ルメイもこんな人物だったのでは、なんてつい思ってしまいます。
 
 フィクションといえば、本作ではあのトリニティ実験をクライマックスにしつつ、それと並行して一人の科学者の死を描いていますが、これも映画の創作なんですね。
 ジョン・キューザック演じるマイケル・メリマンという人物がプルトニウムの取り扱い中に被曝し凄惨な死を遂げるというエピソード、これは戦後にルイス・スローティンという学者の身に起こったことを元にしているのだとか。
 かなり乱暴というか無理のある脚色なんですが、核開発の非人間性や被曝というものの想像を超えた恐ろしさを表現するための選択であるとするなら、理解はできます。私はこのシーンを見て、あの第五福竜丸事件で被爆された方々ももしかしたらこんな目に遭ったのでは、と思ってしまいましたよ。

 先述した通り、あまり思わしくない出来の作品ではありますが、力作ではあると思います。一見の価値はありますね。
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