☆洋ちゃんの読観聴 No. 1667
マイク・モラスキー 「ピアノトリオ 〜モダンジャズへの
入り口」
岩波書店は学術書を専門とする老舗出版社である。
同社が出版する、新書のパイオニアである岩波
新書も人文科学/社会科学の書がほとんどだ。
芸術を扱ったものは少ない。音楽について書かれた
ものは大変少なく、ジャズに関する著述となると、
僕が知っている限りでは、ジョン・コルトレーンを
紹介した1冊のみである。
僕は60年以上ジャズを聴いているジャズファンだが、
実はかねてよりジャズのレコード・CDに付いて
いるジャズ評論家の解説や、専門雑誌における
作品紹介に不満があった。それらは演奏者の略歴や
曲目紹介、そして演奏についての感想が中心で
あったからだ。つまり評論家(と称するが単なる
ファン)が主観的な感覚によって作品を論じた
ものである。
というわけで、本書は僕が待ち望んでいた書で
ある。ジャズにおける根幹とも言うべきピアノ・
トリオに焦点をあて、音楽理論(ハーモニー、
リズム等)と技術(奏法)を分かりやすく解説
してくれている。
代表的なピアニストを取り上げ、具体的に
作品中の曲を取り上げ、演奏中の部分を仔細に
説明している。実際に演奏を聴きながら(今の
時代はレコード/CDを持っていなくても
ユーチューブで簡単に試聴できる)書かれている
内容を確かめることができる。
著者は日本在住のアメリカ人で、日本文学・文化を
専門とする大学教授。僕は彼の著書を読んだことが
あり、それはジャズ喫茶を取り上げ日本独自の
文化を論じたもので、なかなか面白いと思った
ものだが、彼がジャズ理論に精通しているとは
思っていなかった。
マニアックな内容ではあるが、ジャズという
音楽を理論面からなるべくわかりやすく説明
した尽力を評価したい。
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