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2024年04月21日08:52

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1668

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1668      

呉勝浩 「Q」               

血のつながらない姉と同年齢の妹、そして弟の
3姉弟の物語。彼らの義父が何度も結婚を繰り
返したあげく複雑な家庭環境となった。義母も
母親らしい世話をせず、彼らは不遇の子ども
時代を過ごす。

次女のハチは、過去に傷害事件を起こし
執行猶予の身で、清掃会社の非正規社員で、
まっとうな暮らしを目指している。ハチは
姉や弟と連絡を絶っていたが、姉のロクから
連絡が入り、二人の弟キュウが脅迫されて
いることを伝える。

キュウはダンスの天才でスターを目指している。
その才能に芸能関係者は目を付け、彼に
レッスンをほどこし、独特の売り出し方法に
より、彼は少しずつスターの道を歩み始める。
ロクも転職し、キュウの仕事を手伝うようになる。

だが、過去にハチとロクは重大な罪を犯して
いた。それは誰にも知られていないはずだが、
もし明るみに出れば、キュウの未来に暗雲が
立ち込めることになるだろう。

キュウのプロデューサーである百瀬は、SNSに
よりキュウのパーフォーマンスを世界中に
拡散し、ついにかつてないライブ・イベントを
行うことになるが、キュウへの殺害予告が届く。

他にも、ロクの結婚相手やハチの会社の同僚、
彼らの義父など、興味深い登場人物の人生が
垣間見られる。

これまでの著者の作品と比べると、ミステリー
要素は低い。だが、現代社会の問題への告発と
いう彼のテーマについては、過去の作品以上に
描かれていると思う。底辺に生きる人間に
とって、彼らの生活を政治も制度もコミュニティも
家族も誰も助けてくれない。夢は文字通り
見果てぬ夢でしかないのだ。そんな絶望感が
エネルギーを持って、並みでないエンタメと
結びつくとき、人はカタルシスを得られるの
かもしれない。

クライマックスへ向かうときのモメンタム
(勢い)を感じた。言葉の羅列の繰り返しが
あっても、くどく感じない。なかなか、そんな
小説はそうそうあるものでない。


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