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2024年04月02日08:27

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1663

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1663        

高野秀行 「幻獣ムベンベを追え」       

探検ライターの高野秀行の、これが原点とも
言える処女作である。早稲田大学の3年生だった
高野は、同大探検部の10人の仲間と共に、
アフリカのコンゴに行く。今後の奥地の湖には
ネッシーのような怪獣が潜んでいると言われている。

機材をはじめ必要な物資を確保するための
スポンサー探しや日本での現地情報の獲得、
ビザの手配など、現地に行くまでのいろいろな
準備も大変だが、それをはるかに超える現地での
活動が日記の形式で描かれている。

現地には部族がいて、独特の習慣や風習があり、
高野らにつきそったコンゴの野生動物の教授で
さえも彼らに合わせるのに苦労する。なんとか
食糧などを購入し運搬の人員も得ることができた
ものの、注文通りの数でなかったり、契約後に
給与アップを要求されたり、一筋縄ではいかない。

なんとか湖にたどりついたものの、それほど
大きな湖でなく、しかも水深は2メートルくらいと
浅い。こんなところにほんとうに怪獣はいるのか?

食べ物は、持参の穀物以外は現地調達だ。湖の
魚やワニ、野生の豚だけでなく、猿、チンパンジー、
ゴリラなども、現地の人たちと一緒に食する。
ワイルドだ。

さらに隊員の一部はマラリアにかかり高熱を
発する。近くに病院も医者もいない環境下で、
持参の薬で対応するものの、なかなか病状は
好転しない。

言うまでもなく、これは普通の旅ではない。しかし、
旅というものが旅人にとっての未知との遭遇や
発見であるならば、このような探検旅行こそが
究極の旅ではないだろうか。旅行ガイド本を携えて
名所を訪ね確認するだけでは(それでいいと言う
人も多いかもしれないけれど)旅行の醍醐味とは
言えないだろう。

本書の出版にあたっては、著者によると、
隊員全員が一人ひとり経験や感想を著すことも
考えたが、それでは読者が読みにくいだろうと
考え、皆で相談の結果、高野一人で書くことに
なった、とのことだ。

この旅行後、隊員はそれぞれ別々の人生を歩む
ことになるが、高野は探検を続ける。この旅行
以前にはまともに文章を書いたことなどないと
彼は書いているが、まさに本書は彼の探検
ライターの記念すべき第一歩となった。

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