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2024年02月11日08:51

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韓国映画「人生は、美しい」

この映画、お正月明けに福岡市内のミニシアターで上映していたのだが、上映期間が短く、見に行こうとしたらもう終わってしまっていた。
でも、ご覧になったマイミクさんは、とてもよかったと感想を書かれていて、公式サイトで調べたら、佐賀県唐津市の小さな映画館で2月から上映があることが判明。

せっかくだから、唐津まで見に行ってみよう! とちょっと遠出。
福岡・天神からだと唐津駅まで、市営地下鉄、JR筑肥線で1時間半(相互乗り入れの直行電車の快速なら1時間ちょっと)。
何より、この路線は、電車が海のそばを走る区間が多く、車窓を見るだけでもなごむのだ。
20代はじめの頃、初めて筑肥線に乗って、車窓に広がる海を見たときの感激は、やっぱり今でもありありと思いだせる。
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家事に明け暮れ、家族からはあまり大切に思ってもらえない日々をさみしく思う、主婦のセヨン(オム・ジョンア)。
病院の検査で、ガンのため、余命いくばくもないことを知る。
夫のジンボン(リュ・スンリョン)は、高校生の息子と中学生の娘にはこのことは言わないでおこう、と言うが、妻の病気と死期を知っても、あまり変わらない態度にセヨンは不満。
カードで高級ブランドを買ったりしたあげく、ジンボンに「死ぬ前に初恋の人に会いたい。離婚して。さもなくば、いっしょに彼をさがしてよ」と言うのだった。

ジンボンは、ソウルの住民センターの公務員だが、調べて、とセヨンに言われても名前だけで見つかるはずもない。
セヨンは高校時代を過ごした木浦(モッポ)で手掛かりがあるはずと、ふたり、クルマを飛ばして木浦へ向かう。
木浦の高校で、若き日のセヨン(パク・セワン)は、放送部の先輩・ジョンウ(オン・ソンウ)に出会い、恋心をいだくのだった。

しかし高校の事務室では、日本同様、「個人情報保護」のため、卒業生の住所は教えられない、と言う。
落胆するセヨン。しかし、かつて行ったことのある写真館へ足を運ぶと、年老いた館主が、ジョンウが造船の仕事で釜山に行った、と教えてくれるのだった。
釜山は実はふたりの新婚旅行先。海外に行きたかったのに、折しも韓国はIMF経済危機で、やむなく国内にしたのだ。

木浦からさらに釜山へ。ところが造船所でジョンウを知る人からは、彼は転職して清州の放送局に就職したと聞かされる。
かくしてまた、ふたりは車で清州へ向かうのだが、ジョンウはすでに退職。
手がかりがなくなってしまったかに思えた。
そんな中、SNSでジョンウのアカウントを見つけ、島の写真の投稿から、セヨンは高校時代を思い出す。
ジョンウは李氏朝鮮時代の16世紀末〜17世紀に活躍した詩人・尹善道の詩が好きで、尹善道は全羅南道の孤島・甫吉島(ポギルド)で余生を過ごしていた。
島にいるとしたら、甫吉島だ! とセヨンは直感。

さっそく島に向かうと、まさにジョンウの妹がそこで暮らしていて、二人を出迎える。
しかし、なんと、ジョンウは海難事故ですでに亡くなっていたのだ・・


この映画、実はミュージカル仕立て。
そこかしこで、登場人物たちが歌い踊るシーンがはさまれる。
その曲は80年代から2010年代までの韓国でヒットしたポップスの数々。
残念ながらわたしが知っている曲はなかったのだが、韓国人の観客はなつかしく思い出して感情移入できるのだろうなあ。

初恋の人をさがしつつ、セヨンとジンボンの回想シーンが織り込まれ、ふたりのなれそめも語られる。
民主化運動のデモと催涙ガスの中、ジンボンは警官隊に追われ、露地に逃げ込む。
いあわせたセヨンは、ふたりで痴話げんかしていると見せて、警官たちは去って行ってしまった。あやういところを助けられ、ふたりは付き合うようになった。

デートに行った「ソウル劇場」でかかっていた映画は、デミ・ムーア主演の「ゴースト〜ニューヨークの幻」だった。

ジンボンは公務員試験に落ち続け、セヨンは「お見合いする」と告げる。
そんな彼女を失うまいと、熱烈にプロポーズするジンボン。
6回目の挑戦で、ようやく、小さな役所に合格する。

試験に落ち続けていたために、兵役に就くのが遅くなったジンボン。
彼は昨今、短縮された兵役期間を見て「オレたちのころは30カ月もあったんだ!」と叫ぶのだった。

韓国各地を巡るロードムービーであり、ファンタジーのようなミュージカルシーン、高校時代の甘い青春群像が詰め込まれた、楽しい映画。いわゆる「難病もの」のような深刻なシーンはない。最後に、ジンボンがサプライズパーティーを開き、そこにはセヨンのために集まった多くの人が出迎え、セヨンは「愛される」実感を味わう。
それは彼女が「死ぬまでにやっておきたいこと」で、もっとも切望したものだった。

この映画、とにかく、色彩があざやか。
ミュージカルシーンの歌い踊る人々の衣装がくっきりとした色合いなのもそうだし、ヒロイン・セヨンが旅の間着ている、ピンクのコートがずっと目に残る。
そしてセヨン役のオム・ジョンアが、とてもチャーミングなのだ。
夫役のリュ・スンリョンは、日本で言えばムロツヨシとバナナマンの日村を足して2で割った感じか・・?

わたしは、劇中、言及されていた尹善道が気になった。
パンフレットを購入して開いてみても、残念ながら、言及がない。
ネットで調べると、李氏朝鮮時代の詩人、政治家(1587−1671)とある。
晩年は甫吉島で余生を過ごしたらしい。
しかし、ずいぶん昔の詩人である。男子高校生が彼の詩を愛唱したりするのだろうか?
学校で必ず習うのかな。
それで、韓国文化に詳しい知人にLINEで尋ねてみると、
「ふつうは尹善道の詩は知らないと思います。その詩が好きとは、相当変わった文学青年じゃないですかね」というお答え。
まあ、日本でも、万葉集が好きだ、なんて若い子がいるにはいますよね。

映画を見終って、受付の男性に「この映画、福岡で見ようとしたらもう終わってしまってて、唐津で上映してるって聞いて見に来たんです。来てよかったです」と申し上げると、彼もニコニコ。「うちでも1週間しか上映がないので、よかったです」。
小さな小さな映画館だが、これからもぜひ、続いて行ってほしい。唐津駅からは歩いてすぐです。
(2月8日、シアター エンヤ)
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