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2024年03月13日21:54

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映画「落下の解剖学」(ややネタバレあり)

フランスの山あいにある、3階建ての山荘。まわりは雪が積もっている。

人気作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、女子学生からインタビューを受けていた。
ワインを飲みながら、インタビューはすすむ・・と思われたが、3階の部屋にいる夫のサミュエル(サミュエル・タイス)が大音量で音楽を流している。
緊張感もとぎれがちになってしまい、女子学生は早々に話も切り上げて帰ることに。

夫婦の11歳の一人息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は、視覚障害がある。
目は不自由だが、愛犬の「スヌープ」がよき遊び相手だ。
インタビューと同じ頃、スヌープを雪道で散歩させ、家に帰ってきたところ、スヌープの様子がおかしい。
ダニエルが手さぐりでうかがうと・・そこには父が横たわっていた。
大声で母親を呼ぶが、サミュエルはすでに死亡していた。

転落による事故死なのか、それとも突き落とされた? 

サンドラの旧知の弁護士ヴァンサン(スワン・アルロー)がやってくる。
サンドラは「わたしは殺していない!」と言うが、ヴィンセントは「そういうことは問題じゃない」と答える。

サミュエルの頭に傷があり、3階から転落したとき、倉庫の屋根に当たって付いたように思われるが、倉庫の屋根にその痕跡がない。

警察は、サミュエルのパソコンの記録から、死亡前日の夫婦の会話の録音を見つけた。
そこには生々しい夫婦喧嘩の罵り合いが残っていた。
サンドラは殺人罪で逮捕される。

裁判になり、サンドラは過去、同性愛の相手と不倫していたと暴露され、録音データも「夫殺し」の動機に十分とさえ思われた。
人気作家の醜聞に世間の注目も大きくなる。

サミュエルも作家志望だったが、夢はかなわなかった。ドイツ出身のサンドラと出会い結婚するが、サンドラが人気作家になっていくことについての鬱屈がたまっていく。

ダニエルも法廷で証人として出廷。父親がかつて「もう終わりにしたいんだ・・」とつぶやいたことを証言する。
結果、これが決め手になり、サンドラは無罪判決。
サミュエルは精神のバランスを崩し、自殺したものと思われた。


この映画、少し前にテレビの新作映画のコーナーで紹介されていて、興味を持ったのだが・・
わたしは「妻が殺したのか?単なる転落事故なのか?」をめぐるミステリーだと思って見に行ったけど、実のところ最後まで見ても釈然としない。状況から見ても、たしかにサミュエルの自殺が妥当なんだろうけど、ダニエルの伝えた、サミュエルの言葉の真意は果たして「自殺する」だったかはわからない。

途中から法廷劇になるけれど、ずっと重苦しい空気がこの映画を包んでいる。
サンドラの回想、ダニエルの回想がはさまり、この家族が機能不全になり、夫婦の亀裂があらわになっていき、とにかく「重い! 重いよ〜!」という感じ(-_-;)
サスペンスフルなミステリー劇を期待して行ったら、とんでもなくどんよりした、家庭崩壊劇をじわりじわりと見せられる、という具合です。

で、やはりわたしが思い出すのは大学時代のこと。
わたしは文学部出身だが、教員免許取得の必要単位のため「法学概論」を受けに、法学部へ通っていたことがあった(法学部と文学部は同じ大学棟にあった)。
そのとき、法律に疎い、われわれ文学部の学生に講師は真っ先に、
「裁判所は真実を追及するところではありません。有罪か無罪かを決めるところ。有罪なら量刑を決める」と言ったのだ。

まさにこの言葉どおりのことを思い知らされるストーリー。
(3月7日、Tジョイ博多)
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