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2024年03月23日06:32

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韓国映画「ビニールハウス」

ムンジョン(キム・ソヒョン)は、訪問介護士。ひなびた農地にポツンと建つ、黒いビニールハウスが住まいだ。

かつては大学教授であったろうと思われる、インテリのテガン(ヤン・ジェソン)は目が見えず、彼の妻・ファオク(シン・ヨンスク)は認知症を発症。ムンジョンは、その夫婦ふたりの介護を担っていた。

甲斐甲斐しく二人の世話をするものの、ファオクはムンジョンにしょっちゅう暴言を吐き、「アバズレ!」「この女に殺される!」と喚き散らす日々。

ムンジョンにはひとり息子がいるが、少年院に入っている。
だが出所が近い。
つらい介護の仕事も、お金をためて、最低の住環境のビニールハウス住まいを脱し、引っ越して息子と暮らすことを夢見ているからこそ耐えられている。

しかし、彼女の心は不安にさいなまれていた。
無料の集団セラピーを受けるものの、心は晴れず、逆に「親にネグレクトされ、怪しげな男と同居している」という女の子・スンナム(アン・ソヨ)に執着され、つきまとわれる羽目に。
さらに、ムンジョンの実母(ウォン・ミウォン)も病院にいて、認知症をわずらっていた。

ある日、ムンジョンが浴室でファオクの身体を洗っていると、ファオクが暴れだし、抑えようとしたムンジョンともつれあい、その拍子にファオクは後頭部を強く打って死んでしまう。

狼狽するムンジョン。
しかし彼女は救急車を呼ばず、とっさに、この「事故」を隠蔽しようと必死になる。

浴室の血を洗い流し、リビングに死体を動かす。そこへ入ってくるテガン。しかし、彼は目が見えない・・ムンジョンはクルマで運んだファオクの死体を、ビニールハウスの家にある洋服棚に隠すのだった。
そしてあろうことか、同じ認知症の母親を病院から連れ出し、ファオクの身代わりに連れてくる。

テガンは目が見えないものの、なんとなく妻の様子がいつもと違うことに気付く。
学生時代の友人の医師を家に呼ぶが、「妻」はソファに顔をうずめて熟睡中。
後ろから見ても「老いたおばあちゃん」だから、友人もまさか「替え玉」とは思わない。

だが、テガンはその医師から、自分も初期の認知症だと告げられた。
絶望した彼は、まだ自分のことが分かるうちに妻と無理心中をしようと考える。

死体の隠匿を知られたくないムンジョンだったが、スンナムが家を訪ねてくる。そして同居している「先生」に、性的な暴行を受けていることを打ち明けるのだったが、うとましさもあってムンジョンは「殺したらいい」と捨て鉢のように言う。

ムンジョンの息子が出所するが、母親には知らせず、少年院仲間とビニールハウスに忍び込む。そこへやってきたムンジョン。彼女の手が持っていたのは、灯油のポリタンクだった・・


この映画、キャッチコピーが「半地下はまだマシ」。あの半地下で貧困生活を送る家族の物語「パラサイト」を指しているのは明らかだが、「さらにその下を行く悲惨さ」というわけだ。

実際、物語は救いようがなく、雪だるま式に悲劇が悲劇を呼び、事態はさらに悲惨になる。そしてムンジョンは、不幸が不幸を呼び寄せるのか、スンナムのような子しか寄って来ない。

見ていて、やりきれなくなるのだが、微妙に張られた伏線が収束していく様、ムンジョンの日常の介護の様子などが丁寧に描かれ、「替え玉がいつバレる?」というサスペンスに見る者は翻弄される。

なにより、思わぬ形で、ファオクの吐いていた「人殺し!」という暴言が現実になってしまうシーンでぞわっとしてしまう。

日本同様、韓国でも介護問題は深刻なのだろう。
悲惨な運命の中、必死にもがきつづけるムンジョンを演じ、ふと見せる微笑む姿が美しい、キム・ソヒョンの熱演が見もの。
(3月22日、KBCシネマ)
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