mixiユーザー(id:2615005)

2023年07月01日17:04

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『人間の條件』第三部~第六部

『人間の條件』の三部以降のレビューです。

第三部:望郷篇 第四部:戦雲篇(1959)
会社の意向に背いた梶は、徴兵されることになった。陰惨な苛めのため、気の弱い初年兵が自殺する。吐き気を催すようなリアルで嫌なエピソードを、田中邦衛が熱演する。射撃の上手い梶は上等兵に昇進するが、古兵たちの横暴ぶりは相変わらずだ。階級さえ無視されるほどのいじめの構造が出来上がっているのだ。現代に至るまで解決出来ない日本社会の業病である。
新兵の教育を任された梶は理不尽な現状に異を唱えるが、もちろんことごとく無視される。
第四部でついにソ連軍が侵攻してくる。梶は部下(川津祐介)を守って奮戦するも、強力な敵軍に抗すべくもない。戦闘は生々しい迫力に満ちている。ここまでカタルシスの無いアクションは初めて見た。★★★★

完結篇 第五部:死の脱出 第六部:荒野の彷徨(1961)
梶は敗残兵を集めて脱出した。当てもなく森の中をさ迷う一行は、途中で見捨てられた民間人と合流する。女子供や老人を交えた逃避行は、次々と犠牲者を出す。ソ連軍だけでなく、周囲の中国人全員が敵だから、どこにも救いがない。俯瞰して見れば侵略に失敗した国民の自業自得と言えるが、個人レベルではたまったものではない。反戦というテーマが最も強烈に感じられるのが、第五部である。誰もこんな目に合いたくない。
第六部はソ連軍に投降した梶の収容所生活が描かれる。敗走は地獄だったが、強制労働もまた地獄だ。社会主義に夢を見ていた梶は、現実との格差に愕然とする。この描写は公平で納得できる。ソ連のラーゲリ(収容所)を指して「そら見ろアカは怖い」などと言う人がいるが、日本軍の内務班も中国人鉱山労働者も、悲惨なことではいい勝負である。悲惨レベルはどっちが上かなんて、比べても意味がない。
梶は一貫して人間らしく在りたいと願い、節を曲げない。タイトル通りだ。だが、その最低限のささやかな主張は、遂に届くことはなかった。絶望的な彷徨を続ける梶の耳には愛する妻の声が響く。
ヘビー級の心に響く映画だった。★★★★★
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