《アート》ゆとり路

いよいよ緊急事態が宣言された。
そもそも公文書を偽造しちゃうこと自体が緊急事態だし、その犠牲者が自殺してしまっているというのにスルーな社会も緊急事態。
その他、多くについてかなり以前から緊急事態だったのでいささか賞味期限が怪しいが、首都圏の知事たちが、今こそとばかりマイクパフォーマンスに躍起。
安倍ちゃんはもはや何をしゃべっているのか理解に遠く、さすがに小池さんが一番上手だね。森田健作は泣きださんばかりに「俺は男だ！」の感情をマイクにぶつけていた。
コロナファイター神奈川県知事の存在感が薄いのが哀しい。
「もう、どこもかしかも閉まってるよ。どこへ行けばいいというんだよ」
「どこにも出かけるなってことだよ」



《西山美術館》★5．
自粛の文字とは程遠い立ち位置にある私設美術館。
いつ来ても閑散としていて、まるでマイミュージアムにいるような豊かな気持ちに没入させてくれる。
美術館の前庭には時価3500万円の石や、時価2000万円の石などがごろごろ置かれていて、金満旦那の微妙なセンスをさらけ出している。
美術館の山には桜が咲くというのに、どうやら無観客美術館。
地方の美術館こそ安全地帯、よくあることだ。

らせん階段を上がり、パワーストーンとロダン彫刻のメザニン。
ここに来るのは3回目になるのに、全く気が付いていなかった碌山作『女』に卒倒した。
オリジナルの重文石像を長野で観たばかり。ここにも居たのか。
ブロンズ複製だが、3体しかない安曇作という鑑定書付きの本物である。

企画展は『現代日本アーティスト展〜エスプリ〜』
聞いたことのない作家さんばかりだったが、どれもセンスのいい感じ。
その中で見覚えのある作風が1点。

『晩秋のセーヌ』（渡辺米作）
セーヌ川の向こう側に描かれた教会はノートルダムだろうか。
帰り際、手持ち無沙汰の受付おねえさんに尋ねてみたがノーアンサー。
それでも、やっぱり優しく「企画展をプロデュースした会社の担当に聞いておきますね。アドレスをメモさせてください」
こんな時は聞かれてもいない携帯番号もアドレスの下に書いておくからね。
ところが、いまだにノーアンサー

西山美術館といえば、ロダンとユトリロ。
2フロア、3ルームにわたるユトリロの展示室に入る。貸切。

『モンマルトル』
この美術館は17か月ぶり。当時、パリ旅行を控え予習の意味も込めてモンマルトルの風景を脳裏に刻み込んだ。
その2か月後に訪ねた彼の地には、確かにサクレクール寺院が堂々と鎮座し、ムーランドギャレットの風車が緩やかに回っていた。
あの時あった情景は、いま、フランスには消えている。

『可愛い聖体拝受者』
マイベストユトリロ。

アルコール中毒、精神病を患いながら71歳まで生き抜いたユトリロ。
白の時代に残した作品を観るたびにホッとする。
僕が僕であるために、本当は綺麗なものを観て歩いていたい。
でも、首長たちは Stay Home を完全なる是として戒厳令に踏み切った。
閉まるはずのない西山美術館も、ひっそりと扉を閉じて当面の閉館が決まった。
緊急事態があと3時間で始まる前夜。



コロナ疲れ 心の不調への対処
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