地面から這い出る琥珀
音もなく羽化する早朝
夏の空にセットされた
世界を終わらせる爆弾
ZEEE ZEEE ZEEEEEE
秒読みが始まった事に
だれも気付きはしない
セカンドバッグを運ぶ集金人
ミニスカート揺らす女子大生
ノーネクタイの背広の社会人
インタビュー無視する高校生
ノリだけがいい保険の募集人
チック症に悩んでいる受験生
蝉が振動してる
命を燃料にして
空が鳴動してる
青色を震わせて
鼓膜が揺れてる
意識を遠避けて
ZEE ZEE ZEE z
不可視なzの滞空
存在が爆ぜた瞬間
音が吹き飛ぶ波紋
夏特有の濃い静寂
世界がふいに消滅した
少なくとも蝉一つ分は
耳すませば聞こゆ
心臓に和す音一つ
z
亜音速の小文字
音として存ぜぬ
ミクロの断末魔
僕らの小さな心は果たして
蝉より『生きる』だろうか
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