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2019年08月06日18:33

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果てしなき闘い ( 映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』)

こういう日に戦争映画を紹介するのも何やら気が引ける思いなのですが、自分にとっては待望の公開だったのです。

フィンランド。今や様々な分野を通じて日本でもファンが増えつつありますが、第二次世界大戦中に、この国が旧ソ連と戦争をしていた、そしてナチスドイツの(半)同盟国だったのをご存知の方はどれだけおられるでしょう?
文化と歴史は分かちがたいものとして、多くの方に知っていただきたいところなのですが。

1939年秋、ソ連は突如フィンランドに侵攻。
国力の差が歴然としていて、ひとたまりもないと思われたフィンランドは勇戦敢闘し、越年するまでソ連軍をとことん苦しめて世界中の注目を浴びた。時の英国首相チャーチルも絶賛したが、北欧の片隅にあるこの国に援助の手を差し伸べるのは難しく、結局は翌年の3月に自国の領土の10分の1を譲り渡すことでソ連と休戦する。

1941年9月。既にソ連に侵攻していたドイツと手を組むことで失地回復を目指そうと反撃に出る。
1939/40年の戦争が「冬戦争」。1941年が「継続戦争」と呼ばれている。映画で描かれるのは後者の方。ある小さな部隊の転戦記だ。

フィンランドのイメージそのままの、森と湖と荒れ地の風景の中を行軍し、泥まみれになって銃火を交える彼ら。
進撃が止まり、陣地に籠る日々。そこでクリスマスを迎える彼ら。
死が隣り合わせの日常だけに、それを笑い飛ばすようにユーモアを欠かさない彼ら。
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故郷へ休暇に戻り、家族や恋人とのつかの間の再会。占領した(正確には取り戻したのだが)街に残ったロシア人女性らとのロマンスが芽生える者も。

言わば本作は、テレビ映画『コンバット』、1980年の『最前線物語』、あるいは98年の『プライベート・ライアン』と同じく、前線で生き抜く士官、下士官、兵士、それぞれの姿を近い目線で映し出した、まさに正統派の戦争映画。

やはり注目は、その迫力満点のディテール。しかもそれはCGをいっさい使わず全て実写!それもそのはずで、本作はハリウッド製ではない純フィンランド映画。
火薬の量も膨大だったと聞き及びますが、予算はそれなりに限られていたのだろう。スペクタクルよりむしろ「泥くさい」リアルな質感。だからひと昔の戦争映画を観るような懐かしさも覚えた。よくぞここまで作り上げたものだと感嘆させられる思い(多用されるドローンによる空撮は、その工夫の証か)
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主人公格である伍長がとにかく強い。しかも彼は歴戦の強者だけに、自分が納得しない命令には従わない難物でもある。そのタフなキャラクターは、サム・ペキンパーの傑作『戦争のはらわた』(1977年)のジェイムズ・コバーンを彷彿させたりする。

ドイツと歩調を合わせるように、最初は戦勝気分だったのが徐々に退潮していく。その中で部隊は1人また1人と兵士達が命を落としていく。従ってこの映画、ハッピーエンドにはならないのだけど、ラストシーンで「良かった!」と言わせる場面も用意されています。映画マニア目線では評価の別れる結末かもしれないけど。

彼らにとってはまさに「庭先で」繰り広げられた戦争。しかも相手は大国ソ連。手をこまねいていては国そのものが危うい。戦場というミクロから見えてくる非情な世界のマクロな現実。
ことさらに反戦を訴えずとも、かつてあったことを再現するだけでも伝わるものがある。そんな力作でした。
実は、この映画の原作はとても有名な戦争文学で、既に2度も映画化されてるというくらい彼の国の琴線に触れる題材なのですね。日本だと戦艦大和みたいなもの? う〜ん、違うか・・・

フォト【予告編】https://youtu.be/G_pJlgKq4ec
(ポスター/チラシの、兵士が肩に担いでいるのは何?と思ってみれば、実は機関銃の台座というのがマニアック)

〈 シネリーブル梅田で公開中 〉

子供の頃からミリオタだったので戦争映画も大好きだった。
列挙した映画以外でも『史上最大の作戦』『橋』『僕の村は戦場だった』『Uボート』『誓いの休暇』『地下水道』・・・第二次大戦、しかもヨーロッパものだけでもこれだけ名画がある。歴史好きになったのはそれが大きかったのかも。
「あらゆる戦争映画は即ち反戦映画」と、どこかの映画評論家が言われてたのを思い出します。
距離感や角度、描写は様々なれど所詮は映画、エンターテイメントなフィクション、フェイクなのである。それを作り手がどのような誠意をもって観る者に考えさせるか?作品の説得力。
おそらく戦争映画ほど手間のかかるものはないと思う。だからこそ奥が深い。
ん・・・、これってなんだかプロレスに似てないか?って、またそれかい!(笑)

ちなみに、今年は日本とフィンランドの国交樹立100周年。フィンランドが独立を果たしてわずか2年後のこと。

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