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2018年12月24日17:47

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約束の旅路 ( 映画『家(うち)に帰ろう』)

これは隠れた名作だ。同じ日に封切りの『セルジオ&セルゲイ』とどちらを観ようか迷ったけど、こっちを選んで良かった。
いわゆる「アフター・ホロコースト」を扱った映画や小説は数多く、秀作にも事欠かないが(自分が真っ先に思い出す本はプリーモ・レーヴィの『休戦』と、それを解説した徐京植さん)、本作もまた出色と言っていい。

【あらすじ】
ブエノスアイレスに暮らす88歳の仕立て屋アブラムは、自分を高齢者用の施設に入れようとする子どもたちから逃れ、故郷であるポーランドを目指して旅に出る。そして、その旅には、第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分をナチスの手から救ってくれた親友に、自分が仕立てた最後のスーツを渡すという目的があった。

いわゆる「ロードムービー」。アルゼンチンからポーランドまでの長い旅でありながら、映画の尺はわずか90分ちょっと!しかし物語はテンポ良く濃密。あたかもよく出来た小説をサクサクと読み込むような感触。
てっきり自分は、何か有名な原作を基にしてるのか勘違いするほどだったが、実は監督を務めたパブロ・ソラレスのオリジナル脚本。アルゼンチン国籍である彼もまたユダヤ系で、親族達のエピソードの数々を盛り込んでいるそうだ。言わばこの映画は生き延びたユダヤ人達の物語でもあるのだ。

かつて、ポーランドで暮らしていた穏やかで幸せな日々。そして今。わずかな場面を除いて、その間アブラム達にどのような災いが降りかかり、その後どのような人生を歩んだかを映像では説明しようとしない。代わりに物語られるのはアブラムの、怒りと悔しさが滲み出たような独白。それは、ポーランドもドイツの名も口にしたくない。ドイツの地に足を踏みたくない。と頑なさもそうだ。彼の脚の不具合は心と身体の古傷そのもののよう。
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そんなアブラムの覚束ない旅路を、あたかもリレーするように援けるのが3人の女性たち。彼女達との触れ合いが、偏屈爺さんな彼の心をいつしか解きほぐし、目的地へと後押ししていく、その暖かな微笑ましさが実はこの映画の妙味。
やっぱり物語も人の心も、救いはロマンス(愛)なのだなあ、と。

フォト【予告編】https://youtu.be/ZIfBQDqPzdg

〈 シネリーブル梅田で公開中 〉

観終わった後に、下の広場で催されている恒例の「クリスマスマーケット」で、ホットワインを飲みながら今年も買い求めたのがポーランド製の食器。
丸皿はもう2種類も買ったので、迷いながらシチュー皿を購入。
フォト サラダボウルにも使えそうだ。

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