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2018年04月11日21:28

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かくして伝説は作られる

フランス文学者である鹿島茂さん。昔から大好きな方で、彼の著作を何冊読んだろうか。
それでも、いったい何冊出してるの?とあらためて調べるのが億劫になるくらい、夥しいものがあるのですが。自分が読んだのはほんの一部に過ぎない。

以前に図書館で貸し出したエッセイ集『乳房とサルトル』。これはもう10年以上も前のもので、書棚にあったのを「ついでに」お持ち帰りしたものの、他の本に忙殺されてなかなか読む機会が無かったのだけど、先日ようやく取りかかってみたら、さすが鹿島センセイ、期待通り面白い!

タイトルにあるように、かなりセクシャルなネタが多いのだけど(鹿島センセは実はそういう分野の碩学でもあるのだ。それでいて女子大の教授である。)、個人的にいちばん注目させられたのは、フランス人が用いる「汚い言葉」。
いわゆる、英語で言うところの「4文字言葉」。
もちろん、直接的な意味のある単語が存在するのだけど、たいがいの(教養のある)フランス人は「カンブロンヌ」。もしくは「カンブロンヌの一言」と用いるそうだ。
なんやそれ・・・? という読み手の疑問に鹿島センセはすぐさま説明する。

カンブロンヌはナポレオン直属の将軍。近衛部隊の指揮官としてずっと彼に仕え、かのワーテルローの闘いでは、負け戦さになっても最後まで闘い抜き、包囲した英国軍の降伏勧告に対して「ドクロぷっくっくな顔🤟衝撃炎exclamation」と、拒絶と侮辱の言葉を吐いたという。
これが後にたいそう有名になり、ユゴーの小説でも引用されたとか。フランスの心意気、負けん気を現す言葉として痛快に思われたのでしょう。
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ところが・・・、この闘いを生き延び、後にルイ18世の下で貴族の位を授かった彼が、その「歴史的発言」の真偽を尋ねられる度に否定したそうだ。
なんだそりゃ?(笑) 高名な逸話ほど、かくもいい加減に形作られる?
しかし鹿島氏は言う、ことは戦場なのだから、将軍は頭に血が上って何を口走ったのか本人も憶えていない可能性すらある。と。

ここで自分は思い出して吹き出した。まさにそれは、年長の野球ファンなら誰もが知っている、江本孟紀氏の「ベンチがアホやから野球ができへん」と同じではないかと(笑)
あれもマウンドを下されたエモやんが「言葉にならない怒りの言葉」を記者にぶつけて、それを文章として整えられしまった、という疑惑(?)
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エモやんほど有名ではないかもしれないが、同じプロ野球での89年日本シリーズ。巨人から3勝を先取し王手をかけた近鉄のピッチャー加藤哲郎の「巨人はロッテより弱い。」発言も似たようなものだと思い出したり。。。

「カンブロンヌの一言」のような用い方は、いわゆる「婉曲話法(ユーフエミズム)」と言う。
さしずめ日本ならば戦国時代の故事に因む「洞ヶ峠」(日和見を決め込む)、「小田原評定」(結論の出ない消極的な議論)などがそうなのかな?と思ったりもしたのです。

ちなみに鹿島氏のこの項は、パリ市内にある「カンブロンヌ駅」のことをを枕にしている。調べてみれば、メトロの高架駅にもかかわらず、こんな洒落た外観なのですね。自分がここを訪ねる機会はまず無いと思いますがあせあせ
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それはそうとエモやん。いや、江本さん、ガン闘病中と言うことが公にされて本当にショックだ。少しでもいい方向に治癒されるのを願ってやみません。


話は戻り、4文字言葉を使った強烈な曲といえば、やっぱりニール・ヤングのこれだなああせあせ
https://youtu.be/BKaDCP-wKr8


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