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2018年04月06日18:19

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指導者は修羅の道 ( 映画『ウィストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』)

やっぱり向こうの映画は、本気を出せばこんなにもクオリティの高い、力強い歴史ドラマを作れるものなんだと、またしても感嘆させられたのですが・・・
かなり鼻白むところも大きかった。と正直言わせて頂きましょうか。

第二次大戦初頭の1940年、ナチスドイツの侵攻でフランスが敗退した折に首相に就任。瀬戸際に追い込まれた英国を持ちこたえさせた男チャーチル。
映画は、その最も苦しい時期と言われた数日間をフォーカスしている。

フランスに派遣された英国軍は、英仏海峡沿いの町であるダンケルクに追い詰められ、袋の鼠も同然。彼らが壊滅、降伏すれば英国は陸上において闘う能力を喪ってしまう。救出も不可能。(と、その時は誰もが思っていた) まさに土俵際。
折も折、まだ参戦していないイタリアが、ドイツとの休戦交渉の仲介をちらつかせてきた。
意気消沈していた内閣の誰もがこの提案を渡りに舟と考えるが、チャーチルだけは断固拒否。徹底抗戦を叫ぶ。
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これは歴史のどの本にも書かれてある事なのだけど、映画はその対立を実に生々しく描いている。ことにチャーチルの政敵でありながら挙国一致内閣に加わった前首相のチェンバレンと、外相のハリファックス。彼らは和平派であり、他の閣僚たちを巻き込むような感じでチャーチルに交渉を迫る。激昂するチャーチル。しかし、さしもの彼も挫けそうに・・・

と、ここまで文章にすればずいぶんドラマチックで雄々しいエピソードに思われるのでしょうが、戦争省の薄暗い司令部での激論。自分は図らずも14年前に公開された『ヒトラー 最期の12日間』を思い出してしまった。あの包囲されたベルリン地下司令部で、ままならない戦況に逆上するヒトラーに似ているんじゃないかということに・・・
しかも本作がチャーチル付きの女性秘書の目線が加えられているのも『ヒトラー〜』と同じ。
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もちろん両者の状況は全く同じではない。しかし、ダンケルク撤退作戦のための「捨て石」にさせるべく、カレーを守る3000人の部隊に玉砕命令をくだし、ハリファックスに「兵士を死地に追いやるのが愛国心なのか!」と難詰される場面には息を呑まされる。
闘い続けることで人命が夥しく失われ、戦火が国民に及び、塗炭の苦しみを強いらせるのか?そうなる前に敵に膝を屈しても平和を取り戻すか?その重大な選択。それはドイツだけではない。日本もそうだった。チャーチルはたまたま勝者の側に立てたから幸い。しかしそうでなければ彼は戦犯になっただろう。

歴史の分かれ目はかくも大きく、戦争はそれほどに惨たらしい。不屈の信念と書けば字面はいいだろうが、非情にならざるを得ない指導者たる者の重責。特殊メイクに包まれたゲイリー・オールドマンの鬼気迫る演技も相まって、方々考えさせられる映画ではあったのです。
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フォト【予告編】https://youtu.be/rdjzlkj2PrY

昔から戦史本の幾つかに記述されていることではあるけど、ヒトラーは英国侵攻には乗り気ではなかった。チャーチルの見通しは当たっていて、ヒトラーもドイツ軍も海を渡る作戦を苦手にしていた。(じっさい、準備も出来ていなかった)
だから秋波を送るように英国が妥協するのを待っていたそうだ。もしも提案が来たら彼はさぞかし狂喜したことだろう。そして、映画でチャーチルが叫んだように「見せかけの和平」で英国はなし崩しにドイツに支配されたのは必至だったかもしれない。
ヒトラーによると、そのあかつきにはチャーチルをどこかに流して回顧録を書かせるつもりだったそうな。ネタ元はデヴィッド・アーヴィングの『ヒトラーの戦争』。そう、『否定と肯定』のあの人! そう言えば、彼を演じたティモシー・スポールが『英国王のスピーチ』で扮したのがチャーチルだった。
なり切っているのはわかるけど、似てない!(笑)
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最後に話が脱線して恐縮(^^;

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