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2018年03月10日22:56

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映画「シェイプ・オブ・ウォーター」

1962年、冷戦下のアメリカ。
イライザ(サリー・ホーキンス)は軍の秘密研究所で清掃員として働いていた。

彼女は幼いころ、のどを切られる虐待を受け声が出せない。
意思疎通は手話を使い、同じアパートに住むゲイの画家・ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)と、同僚の黒人女性・ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)だけが友達。

ある日、研究所に運ばれてきた水槽。
その中には未知の生物が!
アマゾンで原住民から神とあがめられていたというそれは、見た目は不気味な、いわば半魚人だった。

どうやら研究所では、「半魚人」を極秘で調査しているらしい。
しかしここに勤務するストリックランド(マイケル・シャノン)は、冷酷無比なサディストで、半魚人を電気ショック棒でいたぶっていた。

イライザは偶然、その生き物を目撃してしまう。
さらにストリックランドが半魚人を虐待しているのを知った。

半魚人に関心を持ったイライザ。
彼女は職員たちの目を盗んで、「彼」の入れられた水槽に近づく。
いつも食事に持参するゆで卵を、あげてみる。
そして手話で、これは「egg」なのよ、と教えるのだ。

すぐに「彼」と交流がはじまり、イライザは心が通い合うのを感じる。
人間社会で、彼女の手話を解する人はほとんどいない。
半魚人も言葉は話せない。
だからこそ、手話まじりのコミュニケーションが通じ合うのをイライザは感じていた。

しかし、おりしもキューバ・クライシスで揺れている時期。
研究所の中にもソ連のスパイが暗躍していた。
そのひとり、ホフステトラー(マイケル・スタールバーグ)は、未知の生物の情報を得ようとするが、上司のストリックランドは解剖を命ずる。

半魚人に危険が迫っているのを察したイライザは、無謀にも彼を助けようと、ジャイルズやゼルダを巻き込み、研究所から彼を連れ出して、自分のアパートのバスタブにかくまった。

パワハラ、セクハラし放題のストリックランドはイライザとゼルダを問い詰めるが、ふたりは知らないとシラを切る。
「ふん、ひとのクソを片付ける仕事をしているくせに」
口を割らせることができなかったことへの悔し紛れに、そうさげすんだストリックランドに、イライザは、手話で、
「F・U・C・K!」と悪態をついてやるのだ。もちろん彼はわけがわからない。

しかし朝鮮戦争時代からの上司である元帥に、半魚人の逃亡を責められたストリックランドは、ゼルダの夫を脅迫し、イライザと半魚人の行方を追う。
半魚人と恋に落ちていたイライザは、彼を海に逃がすため、桟橋に向かっていた・・・


今年度のアカデミー賞作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の4部門受賞作。
見た目はブキミな半魚人に恋をするという、いわばファンタジーなのだが、物語の中にゲイや黒人、そして口がきけない障害者というヒロインら「マイノリティー」たちを配し、「反差別」のメッセージをちりばめている。
対照的な差別主義者がストリックランドで、これがとにかく嫌な男なのだが、マイケル・シャノンが演じるクズ男ぶりが見事なくらいだ。

ヘンテコな研究所も、イライザが住む、映画館が入っているアパートも、どこかつくりものめいて、それは全体がおとぎ話のトーンにかえってハマっている感じだ。
1962年はわたしが生まれた年。
キューバ・クライシスで世界がもう滅亡か? と世界が不安に駆られていた、どこか不穏な空気が、劇中にも満ちている。

そして、こんなストレンジな物語を、マイノリティーたちへの暖かなまなざしとして昇華させているのは、ギレルモ・デル・トロ監督の手腕だろう。
監督はメキシコ出身。
トランプの嫌いな「移民」であるが、多様な才能と文化がやってきてこその百花繚乱。
ある意味、彼の受賞は痛快でもあった。

映画の中では手話がキーポイントとなっている。
イライザが「話せない」というハンディが、むしろ半魚人とは手話を使うことで、より理解を深めることにつながった、というところが感慨深い。
わたしの友人はきょうだいが聴覚障害者だが、手話を家族で覚えたことで、お父さんの晩年、耳が遠くなっても、親子三人はお互い手話で意思疎通が図れたという。

ただ、半魚人の造形って、けっこうグロいんだよね(^^)。
(3月6日、エキスポシティシネマ)
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