mixiユーザー(id:26940262)

2018年01月04日15:44

180 view

アフリカ女の意地 ( 映画『わたしは、幸福(フェリシテ)』)

今年の「観始め映画」は、ひとりの女性の姿を通して見る、今のアフリカのリアル。

彼女の名はフェリシテ。フランス語の「幸福」。
フォト
しかし、映画での彼女はちっとも幸せには見えない。以前に離婚したらしく、飲み屋の歌手の仕事をしながら、一人息子を抱えて細々と暮らす日々。
しかも、その一人息子が交通事故に遭い重症を負う。手術をしなければいけないがお金がない。金策に奔走するフェリシテ。やがて取り返しのつかない事態に・・・

観ているこちらは胸を塞がれるばかり。
貧しさはもちろんだが、社会システムが健全に機能していないのが映画から伺える。まず医療保険制度が無い。そしてフェリシテが手間賃稼ぎに「取り立て屋」のバイトをするが。それに同行させるのは警官。その方が脅しが効くからだ。もちろん彼女は警官にマージンを払う。

物語の舞台であるコンゴは、かつてのザイール。建国当時から混乱と腐敗政治が交互に繰り返されてきた。それでいて地下資源大国としての顔も持つ。貧しさにあえぐアフリカの国は多いが、映画で観られるコンゴの首都キンシャサは、それらとは違う一種カオスな喧騒や活気が伺える。そうしたいびつさの反映なのだろう。ここの「世間」がいかにタフで世知辛いことか。しかしフェリシテも映画自体も、それを声高に訴えたり説明しようとはしない。

その代わり静かに語りかけること、それはどんなに辛いことがあっても、絶望さえしなければ、なるようになる。しぶとく生き続けてさえいれば、ささやかな幸せを得られる時もある。。。それはまさに、今のアフリカの姿そのものではないだろうか。
フォト


監督のアラン・ゴミスはフランス人だが、自身のルーツはギニアビサウとセネガル。なるほど、近い距離感の中での揺るぎない眼差しが描き出す街のリアルな空気感は、ふたつの国にまたがる出自ゆえではないかと思った。それでいて息を呑むような幻想感が観られたり。それもまたアフリカなのか。

フォト【予告編】https://youtu.be/u1L1WcwMR7Y

〈 テアトル梅田にて公開中 〉

この映画のもうひとつの見どころは音楽。
観終わった直後に、近くの茶屋町タワレコでこの映画のサントラを買ってすぐ聴いてみた。これがまた素晴らしい。
歌うフェリシテのバックで鳴らされるアフロポップ。同じフレーズを繰り返してどんどん盛り上がる反復リフレインは、ゴスペルやブルース、ファンクのルーツがここにあるのが伺える。
そして、伝統楽器を電化して歪ませている独特のサウンド。
彼らは「カサイ・オールスターズ」。ワールドミュージックの世界では有名なグループで、何度か来日しているそうだ。自分はお目にかかれていないのが残念。

フォト
物語の脈絡に関係なく登場するクラシック楽団と賛美歌のグループ。
彼らは「キンバンギスト交響楽団」。中央アフリカで唯一のオーケストラ。彼らが演奏、歌うのはなんとアルヴォ・ペルト!(リトアニアの現代作曲家)
俗と聖。アフリカの伝統と、キリスト教も含む西洋文化。その対象と混在もまた今のコンゴを現しているのだろうか。

フォト フォト
リミックスバージョンだけ収録されたボーナスディスク付き。公開記念のステッカーが同封されていました。

カサイ・オールスターズ
https://youtu.be/Rod0kSInlgo


10 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する