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2017年10月27日22:49

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19世紀のゴシック小説

・失われた部屋 作:フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
作者の最初と二番目の名前がナカテン・ではなくハイフン=でつながれている。特に意味はないと思うが、どの資料でもそうなっているので、前例に倣うことにする。

1850年代に書かれた短編十本を収録した本だ。ホラーファンタジーにSF要素が少し入っている。こういうタイプをゴシック小説と呼ぶそうだ。仰々しいわりに退屈なことが多いので覚悟して臨んだが、本書はまるで違う。大時代ではあるが、退屈ではない。

表題作は、自分の部屋に並ぶコレクションに関する解説や妄想から始まる。いかにも19世紀的だ。ストーリーはあっけなくて「えっ、これで終わり」という感じ。
『あれは何だったのか』怪人と戦う。タイトル通りの感想だ。何だったのかを書くのが小説だろう。と思うのは21世紀だからか。不気味なムードは好きだ。

最初の二篇は物足りないが、あとは佳作や傑作が続く。
『鬱金香の鉢』幽霊譚、陰惨な発端だが結末は爽やか。
『墓を愛した子供』暗くてもの悲しい掌編。かなり好きだ。
『口から手へ』本書の白眉というべき幻想譚である。変なホテルに閉じ込められた。壁についた耳が盗み聞きして、口が主人に通報する。両足を分離された美女を助けて脱出するのだ。成人男子版「不思議の国のアリス」か。アリスより8年早い。

『ダイヤモンドのレンズ』は極小世界の美女、『いかにして重力を克服したか』は無重力装置がテーマだ。科学に対する憧れと不安が同居したレトロSFである。
『パイオウ・ルウの所有せる龍の牙』架空の中国を舞台とした冒険ファンタジーだ。漢王朝の後継者が、韃靼人の清朝打倒に立ち上がる。歴史観がめちゃくちゃですな。でも痛快で楽しさ爆発だ。当時の英米人にとって中国は「魔法の国」と同義語だったのか。

『世界を見る』すべてを知ることは幸福だろうか。よくできた寓意譚だ。
『ワンダースミス』ロボットSFの元祖と言われているが、それは違うだろう。本作に登場するのは単なる呪い人形だ。おどろおどろしい展開に惹きつけられる。

「ポーとピアスをつなぐ作家」と言われている。たしかにポーの後継者と言えるかもしれない。このあとドイルやウェルズが登場して近代エンタメが夜明けを迎えるわけだな。
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