mixiユーザー(id:2615005)

2010年06月03日23:56

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村上龍の『五分後の世界』『イン ザ・ミソスープ』

久しぶりに読書日記です。中国語の映像を見続けているせいか、本を読むスピードが鈍くなってきた。京極と宮部の新刊が入手できないのが口惜しいが、村上龍の面白そうなのを二冊読んだ。

・五分後の世界
小田桐が迷い込んだ<五分後の世界>では、大日本帝国が未だに存在していた。人口二十六万に激減した日本人は、地下帝国を築いて連合軍と戦い続けているのだ。産業は覚醒剤とゲリラ兵士の輸出。

世界の構築力は下手なSF作家顔負け。いや、パラレルワールドの日本をここまで描ききったSF作家がいただろうか。私の知る限りでは一人もいない。日本陸軍がパワードスーツを使ってソ連軍をやっつけたり(田中光二)日本海軍が勝ちまくっているのに、なぜか世相は現代とほとんど変わらず「自由で」「アメリカ文化を満喫している」(荒巻義雄)大ボケ小説は蔓延しているけど。荒巻の場合は、ナントカ艦隊の世界で庶民がどんな生活をしているか想像できなかったので、「今と同じ」にしたんだろうね。脳が腐ってるわ、こいつら。

列島の住民は<非国民><準国民><国民>に大別されているが、いったん国民になれば一切の差別はない。嫌な世界には違いないが、並みのデストピア小説とはひと味違う。本作の日本軍は恐ろしくクールで強い。ドーピングと自前の新兵器で、世界最強のゲリラ部隊を作り上げているのだ。無能の極致だった旧軍にそんな甲斐性があるか?とか、日本人には完全な鎖国状態で独自のハイテクを育てる能力はない(アレンジするのは得意だけど)とか、細かい突っ込みはできるが、まあそんなのは瑣末事だ。
何が凄いといって、ありえたかもしれない「もうひとつの日本」のディテールをみっちり描き込むことで、現実の日本の異様さが浮かび上がってくること。
「われわれの勇気とプライドを示していかなくてはいけません」
この世界の教科書の一節だ。どこにも媚びず頼らず、胸を張って生きる地下の住人たちは、嫌になるほど健全でまっとうだ。現実の日本が病んだ奇形の天国なら、この世界は美しく健康な地獄なのだ。

やっぱ住むならアメリカの奴隷国でも、こっち側の日本がいいなあ。★★★★★

・イン ザ・ミソスープ
ケンジの仕事は外人相手のナイト・アテンド(性風俗ガイド)だ。薄気味悪いアメリカ人のフランクを案内することになったが、どうやらこの男は猟奇殺人の犯人らしい?

悪趣味でグロテスクな小説だ。私はそういうのが好きなので、多いに楽しんだ。病んだ人間の内面をここまで書けるのは凄いと思う。これでこそ作家だ。この一作だけでも、村上が当代最高の書き手のひとりだということがわかる。「日本人には生物としての自己防衛能力がほとんどない」という指摘は、『半島を出よ』のテーマにも通じるところがある。

サイコキラーの白人と北朝鮮特殊部隊、どちらに殺されるほうがマシかな。どっちも嫌か。
★★★★



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