日本で買った本。
・うすゆき抄 作:久生十蘭
春陽文庫の時代小説傑作集だ。1950ー52年にかけての短編が七編と戦前1940ー43年の短編を三篇収録する。
この作家はけっこう読んでいたが、あまり覚えていない。夢野久作と同時期に読んで、夢野の印象に圧倒されたようだ。捕物帖以外の時代小説は初読みである。
非常に好みだった。こんなに面白い作家だったのか。あまりに筆致がリアルなので、史実か古典リライトかと思った。全部創作と知って感嘆の至り。やはり時の流れに耐えたレジェンドは信用できる。
「無月物語」は因業オヤジと家族の悲劇だ。封建時代に家長が外道だと、とんでもない事態を招く。
表題作は残酷な悲恋物語だ。
「玉取物語」は大名の睾丸炎?を蘭法医が外科手術で治療する。別の意味で悲惨で、笑える。
「重吉漂流紀聞」は江戸時代の漂流が題材で、「新西遊記」はラマ教に支配されるチベットに経を求めて潜入する。いずれも他の作家が書かないユニークなテーマだ。先がまったく予想できない。「湖畔」は真相が二転三転するミステリーだ。
三本の戦前の作は、いずれも膨らませれば500ページくらいの長編にできるネタを40ページほどで駆け抜ける。潔いというか勿体ないというか。現代は無意味に長い小説が多いので、見習ってほしい。
宝の鉱脈を堀当てた気分だ。★★★★★
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